【台北時事】先月末、中国人の男が台湾に密航する事件があり、台湾当局の調べに、ゴムボートで中国から台湾に渡ったと供述していることが分かった。3日付の台湾各紙が報じた。事実なら、沿岸警備当局や海軍の監視をかいくぐって台湾に上陸、ゴムボートを使って中国本土から台湾本島に密航した初のケースとみられ、男の密航の目的などをめぐり、「中国が台湾の沿岸警備能力を試しているのではないか」といった臆測が台湾で広がっている。

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 海軍幹部は3日、「積んでいた燃料の量から、ボートで密航に成功する確率は低い」と述べ、途中まで船で運ばれてきた可能性などを示唆。当局は男の供述の裏付けを進めている。

 男は4月30日深夜、台中港で地元民に発見され、当局に身柄を拘束された。供述によると、男は同日午前に福建省石獅市から船外機を装着したゴムボートに乗って出発し、同日夜に台中港に到着した。石獅からは直線距離で約185キロで、十数時間かけて台湾海峡を渡った格好だ。男は33歳で、密航の目的について「自由な台湾で生活したいと思った」などと話している。

 ゴムボートは中国山東省のメーカー製で、魚釣りのほか、海難救助や軍事目的にも使用できる頑丈なタイプという。男は船外機も含めネット通販で1万6000元(約27万円)で購入したと供述している。当局は、男が単独で密航を企てたのかどうかや、密航の目的について詳しく調べている。