トランプ米大統領が29日(米国時間)にホワイトハウスのシチュエーションルーム(緊急事態管理室)で約2時間にわたる高官会議を開いたにもかかわらず、その詳細や「停戦案を受け入れるか否か」の最終決断を公表していない背景には、「トランプ流の交渉術」と「実務上の重大なハードル」という2つの側面があります。
ホワイトハウスの声明や米メディア(AxiosやAP通信など)の報道から、以下の4つの理由が浮かび上がっています。
1. まだ「文言の文脈」で激しい押し問答が続いている
JDヴァンス副大統領が記者団に明かしたところによると、実務者の間では暫定合意(覚書)に達しているものの、「いくつかの文言(表現のポイント)について、現在も双方が激しく修正を求め合っている(back and forth)」状態です。トランプ氏が100%納得する形に書類が仕上がっていないため、現段階で「受け入れた」とは公表できないのが実情です。
2. トランプ氏が掲げる「レッドライン(譲れない一線)」の存在
ホワイトハウスの高官は会議後、「トランプ大統領はアメリカにとって利益になり、自身の『レッドライン』を満たす合意しか受け入れない」と明言しました。トランプ氏が求めている条件は非常に厳格です。
- イランが核兵器を絶対に保有しないという確約
- 高濃縮ウランの完全な処分・廃棄
- ホルムズ海峡の完全な無料開放と機雷の即時撤去
トランプ氏は、これらが確実に履行される担保(約束)がない限り、安易に署名して「妥協した」と批判されるのを嫌っています。
3. イラン側の「合意していない」という反発
アメリカ側が「トランプ氏の承認待ち」と報じた直後、イラン政府関係者や国営通信は「草案は最終決定されておらず、事実ではない」と報道を否定しました。イラン側も国内の保守派の手前、アメリカに押し切られた形での合意は受け入れられず、揺さぶりをかけています。相手が合意を否定している段階でアメリカ側だけが中身を公表すれば、交渉自体が破綻しかねません。
4. 「ディールの達人」としての演出(時間をかけた優位性の誇示)
トランプ氏は自身の著書『取引の芸術(Art of the Deal)』でも示している通り、交渉の最終局面で「あえて決断を数日間保留し、焦る相手からさらなる譲歩を引き出す」、あるいは「自分が主導権を握っていることを世界に誇示する」という戦術を好みます。今回も仲介者に対し「数日間検討したい」と伝えており、ギリギリまで緊張感を引っ張ることで、自身にとって最も有利な条件(ディール)を確定させようとしているとみられます。