憲法改正の手続きを定めた国民投票法の改正案は、衆議院憲法審査会で、立憲民主党が求めていた国民投票の広告規制などについて修正を行ったうえで、自民・公明両党や立憲民主党などの賛成多数で可決されました。

国民投票法の改正案をめぐっては、立憲民主党が、国民投票の広告規制などについて「施行後3年をめどに法制上の措置を講じる」ことが改正案の付則に盛り込まれれば採決に応じる方針を示したことを受けて、自民党の二階幹事長と立憲民主党の福山幹事長が、6日午前、国会内で会談しました。

そして、立憲民主党の提案に沿った修正を行ったうえで、今の国会の会期内に成立させることで合意しました。

このあと衆議院憲法審査会で改正案と修正部分の採決がそれぞれ行われ、自民・公明両党と立憲民主党、国民民主党の賛成多数で可決されました。

日本維新の会は、改正の原案に賛成したものの、修正部分には反対しました。

共産党は、いずれも反対しました。

改正案は、近く開かれる衆議院本会議で可決され、参議院に送られる運びで、平成30年に提出されて以来、およそ3年を経て成立する見込みとなりました。

秋までに行われる衆議院選挙では憲法改正も争点の1つとなる見通しで、各党が示す改正の是非や内容が問われることになります。

改正案の内容と経緯

国民投票法は、憲法改正の際に行う国民投票の仕組みや手続きなどを規定したもので、憲法の施行から60年たった平成19年、第1次安倍政権のもとで成立しました。

その後、平成26年には、国民投票の投票年齢を18歳以上に引き下げることなどを定めた改正法が成立。

そして、3年前の平成30年6月に、自民・公明両党や日本維新の会などが、投票の利便性を高めるため、さらなる改正案を提出しました。

この改正案には、公職選挙法にあわせて、国民投票も、事前に決められた投票所以外でも投票可能な「共通投票所」を、駅の構内やショッピングセンターなどに設置できるようにするほか、船の上での「洋上投票」の対象を、遠洋航海中の水産高校などの実習生にも拡大することなどが盛り込まれています。

改正案は、提出後、自民党が「自衛隊の明記」など4項目の憲法改正案を審査会に提示する姿勢を示したことに野党側が反発するなどして与野党の協議が整わず、継続審議となってきました。

去年11月、衆議院憲法審査会で実質的な審議が始まり、与党側は、内容の議論は尽くされているとして早期の採決を求めました。

これに対し、立憲民主党などは、今の法律では、テレビ広告の費用に上限がないため、資金力のある政党や政治団体の主張が結果に影響を与えかねず、広告規制も議論すべきだとして時期尚早だと主張。

臨時国会の会期末を前に、自民党と立憲民主党の幹事長が会談し、今の国会で「何らかの結論」を得ることで合意しました。

今の国会では、先月15日に衆議院憲法審査会で審議が再開され、来月16日の会期末に向けて、その取り扱いが焦点となっていました。

自民 新藤元総務相「責任果たせたが通過点」

衆議院憲法審査会の与党側の筆頭幹事を務める自民党の新藤元総務大臣は、記者団に対し「採決がいたずらに引き延ばされてきたことは遺憾だが、円満に採決できたことは喜ばしく、責任を果たせた。国民投票法は、時代状況や公職選挙法の動向によってアップデートが必要で、きょうは通過点だ。憲法改正の議論もさらに進めていかなければならない」と述べました。

自民 細田衆院憲法審査会長「一歩前進」

自民党の細田衆議院憲法審査会長は、記者団に対し「意見の相違があまりないのに、採決まで3年も時間がかかったのは遺憾だが一歩前進だ。緊急事態条項も含め、憲法の在り方については国民的関心が高まっていて、問題がいくつも残っている。さらに議論を進めることが大事だ」と述べました。

立民 山花憲法調査会長「1つの成果」

立憲民主党の山花憲法調査会長は、記者団に対し「与野党で主張に隔たりのある状況が続いてきた中で、最後にお互いギリギリのところで着地点を見いだせたことは1つの成果だ。法案にはCM規制などの課題があり、投票の公正さに疑義が生じる可能性もあると考えており、今後は、この議論に最優先で取り組むべきだ」と述べました。

維新 馬場幹事長「法案可決は当然のこと」

日本維新の会の馬場幹事長は、記者会見で「法案の可決は当然のことで、遅きに失した。ただ、修正案については、今後の憲法審査会の開催を妨害する意図があると感じ反対した。来週以降も審査会を開き、国民に憲法改正の必要性を感じてもらえるよう、いろいろな課題の議論を深めていきたい」と述べました。

共産 志位委員長「採決に強く抗議したい」

共産党の志位委員長は、記者会見で「採決が行われたことに強く抗議したい。『戦争国家』や『独裁国家』づくりを進めようというのが、自民党の改憲4項目であり、それへの第一歩という位置づけで国民投票法の改正が進められているわけなので、断固反対だ。『安倍・菅改憲』を許さない戦いに本腰を入れて取り組んでいきたい」と述べました。