新型コロナウイルス感染症(COVID19)を巡りブルームバーグがまとめる世界で最も安全な国・地域の番付「COVIDレジリエンス(耐性)ランキング」には今月、大きな変動があった。シンガポールがトップの座を失ったのをはじめ、これまで感染を抑え込んできたアジアの国・地域が後退。一方、ワクチン接種で先行した国々は引き続き順位を上げた。

  5月の番付で最も順位を落とした7カ国・地域は全て、これまで新型コロナ対応が称賛されてきたアジア太平洋地域に位置している。日本と台湾はワクチン接種の出遅れと感染再拡大でトップ10から脱落。東南アジアと南アジアでは世界最悪の感染拡大に見舞われているインドを含む国々が順位を下げた。

  7月に予定する東京五輪を前に感染を抑え込もうと政府が緊急事態宣言を延長している日本は7位後退し14位。台湾は15位と、4月の5位から急落した。数カ月にわたり域内感染がなかった台湾だが、今月に入って感染者が急増し、緩やかなロックダウンに至っている。  

  対照的に、欧州の一部と米国は大流行が徐々に収まり着実に順位を上げている。ワクチンで抗体を得た人が増えるのに伴い各国は旅行を解禁、マスク着用の義務をなくし、COVID19から自由になろうとしているようだ。英国は7位躍進して11位、米国は13位に順位を上げた。

  欧米とアジアのこの逆転劇は、ワクチン、特に画期的なメッセンジャーRNA(mRNA)技術を採用したワクチンの効果を反映している。mRNAワクチンには重症化を防ぐばかりでなく、感染自体を抑える働きがあるようだ。欧州のワクチン接種が加速しロックダウン(都市封鎖)が解除されるのに伴い、フランスとポーランドはそれぞれ18段階、13段階も順位を上げた。

relates to 日本と台湾が転落、10位の圏外-新型コロナ時代の安全な国ランキング
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  COVID耐性ランキングは幅広いデータを用い、社会・経済への影響を最小に抑えつつ最も効果的な新型コロナ対応を取っている国・地域を特定する。死亡率や検査率、ワクチンへのアクセス、移動の自由などを勘案する。国(域)内総生産(GDP)2000億ドル(約21兆7000億円)超の国・地域を毎月比較する。

ブルームバーグCOVID耐性ランキングの補足説明

  3月まで5カ月連続で首位だったニュージーランドは5月にトップの座に返り咲いた。同国は国内から新型コロナをほぼ駆逐し、国民は海外渡航を除きコロナ前と同じ自由を謳歌(おうか)している。

  しかし、ワクチン接種が始まったばかりで接種を受けた人が国民のわずか5%にすぎないニュージーランドには、かつての抑え込み成功組と同じ道筋をたどるリスクがある。

  厳密な国境管理をくぐり抜けて感染が再燃したシンガポールと台湾は、経済再開を既に始めている欧米諸国の一部で今も見られる症例数をはるかに下回る感染例に対しても積極的に対応を講じるため、制限措置を繰り返し導入するサイクルに陥る恐れがある。わずかな感染例も許さない姿勢はランキング3位のオーストラリアと9位の中国、10位の香港にも見られるが、世界の他の国・地域が新型コロナの存在を受け入れ前へ進もうとする中で弱点になるかもしれない。

  新たな変異株の出現が続く中、シンガポールはワクチン接種の方法について検討し、2回の接種の間隔を広げることを計画している。限られたワクチンを成人人口のより多くに行き渡らせるため、昨年12月に英国が採用した戦略だ。容赦ない感染拡大で1家族全員が死亡するという悲劇も起きたインドも同じ作戦を取る。1日の新規感染が約25万件、死者数が4000に上る同国は20位下げて53カ国・地域で下から4番目の順位となった。

  最下位はアルゼンチン。新規感染者が前回の最多を超え、制限措置を強化した。

  今問題なのは、インドや中南米で出現して懸念を深めている新しい変異株が、米国やイスラエル(4位)などでの正常化の取り組みを頓挫させないかということと、アジアがワクチン接種で先行組に追いつけるのかということだ。

  6月のランキングでは、世界の旅行復活と経済再開への道筋が鍵になるだろう。

原題:U.S., Europe Rise in Best Places to Be in Covid; Asia Suffers(抜粋)