日本や中国など東アジアに住む人々の祖先は、2万5000~2万年前にコロナウイルスの流行を経験しており、42種類の遺伝子に痕跡が残るとみられると、オーストラリアのクイーンズランド工科大や米アリゾナ大などの研究チームが発表した。世界の人々の全遺伝情報(ゲノム)を解析し、遺伝子の個人差などを公開している「国際1000人ゲノムプロジェクト」のデータを調べた成果で、論文は24日付の米科学誌カレント・バイオロジー電子版に掲載された。

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 42遺伝子には、ウイルスが人の細胞に感染して増殖しやすくなるよう変えられてしまった遺伝子と、反対に人間側が免疫などを強化して対抗するために変えた遺伝子がある。このうち4種類は新型コロナ治療薬や新薬候補の標的になっており、他の遺伝子も新薬開発に役立つ可能性があるという。

 一方、日中とモンゴル、朝鮮半島、台湾の人々の遺伝子にこうした痕跡が残ることが、欧米に比べて新型コロナ流行が抑制される要因であるかについて、研究チームは生活習慣や保健医療などの影響の方がはるかに大きいとして、否定的な見方を示した。

 ただ、研究チームによると、新型コロナウイルスのほか、2002~03年に中国から世界に流行が広がった重症急性呼吸器症候群(SARS)のコロナウイルスの仲間は約2万3000年前に出現したと推定され、東アジアでの流行時期とほぼ一致する。ウイルスは単独では増殖したり進化したりできないため、流行して増殖と変異を繰り返すことで出現した可能性が考えられる。