【ワシントン時事】トランプ前米大統領の一族企業「トランプ・オーガニゼーション」の税務不正疑惑をめぐり、ニューヨーク州のマンハッタン地区検察は1日、同社とワイセルバーグ最高財務責任者(73)の起訴を発表した。捜査はさらに続き、政界復帰に向けたトランプ氏の活動への影響は避けられない。

 起訴状によると、ワイセルバーグ氏は同社から高級車のリース料やマンションの家賃をあてがわれながら、相当する所得税を支払っていなかった疑い。こうした罪で法人が起訴されるのは極めて異例で、同社側は「不当捜査」だとして無罪を主張した。

 米メディアによれば、ワイセルバーグ氏はトランプ氏の父の代から仕え、同社の資金の出入りを知り尽くした「金庫番」。トランプ氏からは「100%裏切らない男」として信頼が厚い。

 今回の起訴は、トランプ氏本人に照準を定めた「より広範囲の捜査の基盤」(ニューヨーク・タイムズ紙)になるという見方がある。同社をめぐっては、税制優遇を受けるため資産価値を不当に安く見せ掛けるなどした疑惑も浮上。ワイセルバーグ氏は有罪となれば10年以上の禁錮刑に服する可能性があり、検察は司法取引を持ち掛けて捜査への協力を迫るとみられる。

 トランプ氏は来年11月の中間選挙に向け、政治活動を活発化。2024年大統領選への再出馬も視野に、自身を批判する議員に選挙で対抗馬を立てるなど影響力の維持に努めている。

 ただ、トランプ氏をめぐっては、ジョージア州司法長官に選挙不正を働き掛けた疑惑などで捜査が進むなど、ニューヨーク以外でも司直の手が伸びる。捜査の進展次第で共和党内の「トランプ離れ」が進む可能性がある一方、熱心なトランプ氏の支持者の反発を一層かき立てることも想定される。

 ワシントン・ポスト紙によると、トランプ氏は周辺に対し「彼らは何年もの間私を捜査してきて、持っているものはこれがすべてだ」と語り、強気を崩していないという。