【ニューヨーク時事】バイデン米政権は5日、気候変動対策の一環として、新車の半数を2030年までに電気自動車(EV)などの電動車とする目標を打ち出した。規制緩和を進めたトランプ前政権の方針を大きく転換する内容だが、投資負担の増大や、ビジネス環境の急激な変化を嫌う業界への配慮もにじんでいる。

 「EVや電池は米国産でなければならない」。電動車の推進に関する大統領令に署名したバイデン氏はこう述べ、電動化を雇用拡大につなげる狙いを強調した。

 ホワイトハウスで行われた署名式典には、ゼネラル・モーターズ(GM)など米自動車大手3社や全米自動車労組(UAW)の幹部らも出席。業界一丸となって目標達成を目指す姿勢をアピールした。日系メーカーも「(米市場での)役目を果たしていく」(トヨタ自動車)、「40%以上のEV化を目指す」(日産自動車)と協力を表明している。

 ただ、バイデン氏が示したのは、強制力のない数値目標。欧州連合(EU)欧州委員会や米カリフォルニア州が排ガスを出す車の将来的な禁止を掲げるのとは対照的だ。また、30年の時点でもガソリン車などの販売は認められており、一定の時間をかけて段階的に電動化に取り組みたい企業側への譲歩が透けて見える。

 背景には、米自動車各社の収益がピックアップトラックなどの大型ガソリン車に依存している構造的な問題がある。現在、EVは米新車販売のわずか2%程度にすぎない。EVへのシフトで生産現場が合理化され、雇用減につながるのではないかという警戒感も労働者の間で根強く、「集票力がある労組に配慮した」(業界関係者)という指摘が上がっている。