[東京 12日 ロイター] – 東芝の綱川智社長兼最高経営責任者(CEO)は12日の4─6月期決算説明会で、年内に臨時株主総会を開き、新たな取締役会議長と監査委員を提案し、承認を得たいとの考えを示した。同時に発表した2022年3月期第1・四半期決算は好調だったが、通期計画は据え置いた。

<株主との意見「ずれなくなってきた」>

同社が今年6月に開いた株主総会では、議決権行使比率が初めて8割を超える中、永山治取締役会議長と、小林伸行監査委員の再任が否決された。

綱川社長は、総会以降、さまざまな株主と積極的に対話を進めており「精力的に意見を聞いているので、ずれはなくなってきていると思う」とした上で、後継のCEO選定は「議長を含めた上で決めてもらうのが常識的な流れかと考えている」と、議長と監査委員の承認を優先する方針を示した。

同社は新たな中期経営計画を10月に公表する予定。

<非上場化、メリットとデメリット>

非上場化に関しては、現時点で具体的な提案は引き続きないとしながらも、短期的な業績変動に左右されない経営などがメリットとなる一方、上場で得られる信用力やブランド価値の維持などが課題になると説明。「非上場化が全ステークホルダーにとって最も価値を創造する選択肢であるかは、より一層慎重な検討が必要だと考えている」と述べた。

同時に「非上場化を含めさまざまな企業価値向上のための提案を選択肢として排除するものではなく、取締役会や戦略委員会で結論ありきではなく、さまざまな可能性について議論を行っている」とも説明した。

<第1・四半期業績は上振れ基調>

22年3月期の連結営業利益予想は1700億円と、期初計画を据え置いた。

車載向けの半導体、データセンター向けのHDD(ハードディスク駆動装置)などがけん引役となり、足元業績は好調。第1・四半期の売上高は21%増の7278億円となり、これらを擁するデバイス&ストレージソリューション事業は前期比6割増収、営業損益も前期の46億円の赤字から103億円の黒字に転換した。

地域別の売上高は、国内が伸び悩む一方でアジアが47%増、北米43%増、欧州61%増と海外が大きくけん引。海外売上高比率が5割を超えた。

平田政善代表執行役専務CFOは、通期予想を据え置いた理由を「一部事業は売り上げ、損益が上振れる期待もあるが、新型コロナの感染拡大、素材・輸送費の高騰、半導体不足など、様々なリスク要因をもう少しウオッチする必要がある」と説明した。

IBESがまとめたアナリスト14人の通期営業利益の予想平均値は1808億円。

(基太村真司 編集:山川薫、田中志保)