【北京=大木聖馬、バンコク=山村英隆】中国に続き、台湾が環太平洋経済連携協定(TPP)への参加を申請した。今後、中台加入を巡る駆け引きが激しくなることが予想されるが、TPPに参加する11か国の間でも温度差が大きい。議長国を務める日本は難しい対応を迫られる。

 中国外務省の 趙立堅ジャオリージエン 副報道局長は23日の記者会見で、台湾のTPP加盟申請について、「台湾がいかなる(国家間の)公式な協議、組織に加盟することにも断固反対する」と反発した。

 中国は、中台が一つの国に属するという「一つの中国」の原則を掲げる。国際社会で台湾を「国」と同様に扱う動きが広がる事態を強く警戒しており、今後、参加国に台湾加盟を認めないよう水面下での働きかけを強めていくとみられる。

 マレーシアの国営ベルナマ通信は19日、「中国の加盟に向けた動きは勇気づけられる」とするマレーシア貿易産業省の立場を報じた。シンガポールも13日、中国の動きを歓迎する考えを示すなど中国の受け入れに前向きな国も出ている。

 ただ、TPPに加わるには参加11か国すべての同意が必要で、中国の思惑通りに進むかは見通せない。

 豪紙オーストラリアンによると、中国の申請時は慎重な姿勢を示していた豪州のダン・テハン貿易・観光・投資相は23日の声明で、「全会一致の原則に基づいて台湾の申請を検討していく」と強調した。

 中台の申請で注目が集まるのがTPPから離脱した米国の出方だ。

 訪米中の茂木外相は23日(現地時間22日)、ブリンケン米国務長官と会談し、TPP復帰を促した。バイデン政権内では雇用への悪影響の懸念を背景にTPP復帰慎重論が根強いが、粘り強く説得を続ける考えだ。