【北京時事】中国が暗号資産(仮想通貨)の全面禁止を打ち出した。同国は法定通貨で主要国初となるデジタル通貨「デジタル人民元」を来年にも正式に発行する見通し。競合相手となりかねないビットコインなど民間の暗号資産を事前に締め出し、導入に万全を期す狙いがあるとみられる。

 中国人民銀行(中央銀行)は24日公表した通知で、暗号資産が投機をあおったり、詐欺やマネーロンダリング(資金洗浄)などの犯罪の温床になったりしていると批判。「暗号資産は法定通貨ではない」として、流通や使用を禁じる新たなルールを明らかにした。関連サービスの提供も「違法な金融活動」と認めない方針だ。

 中国当局は近年、暗号資産への締め付けを強化する一方、デジタル元の実用化に向けた動きを加速させてきた。北京や上海、広東省深センなどの主要都市で大規模な実証実験を実施。来年2月の北京冬季五輪を見据え、本格導入の時期を探る。

 人民銀はデジタル元を小口決済の手段と位置付ける。実証実験が行われている都市の住民なら、スマートフォンにダウンロードした大手銀行のアプリに「ウォレット(財布)」を設け、商品を購入する際の支払いなどに使うことが可能だ。個人が保有するウォレットの数は6月末時点で2087万件に達している。

 デジタル通貨は、最初に導入した国がその後の国際競争でも優位に立つ公算が大きいとみられている。中国はデジタル元を足掛かりに自国通貨の国際化を進め、「デジタル元経済圏」の構築をうかがう。

 シルクロードを股に掛けた巨大経済圏構想「一帯一路」との相乗効果も期待され、中国の世界戦略の中で強力な武器となり得る将来性を秘めている。それだけに、基軸通貨ドルを擁する米国との覇権争いは、一段と激しさを増す事態も予想される。