24日に開催された日本、米国、オーストラリア、インド4カ国の枠組み(クアッド)の首脳会議で、各国首脳は名指しこそしなかったものの、覇権主義を強める中国へのけん制が事実上の焦点となった。ただ、米政府高官は「(クアッドは)地域安全保障機構ではない」と明言し、軍事的緊張が高まることに慎重な参加国に配慮。新型コロナウイルスのワクチン供給など具体的な課題での成果を優先した。

 4カ国が連携を深める背景には、権威主義的統治の正当化や、海洋進出の強化などで米国が主導する国際秩序に挑戦する中国への危機感がある。クアッドが掲げる「自由で開かれたインド太平洋」の推進や、東南アジアへのワクチン供給は、各地で影響力を強める中国への対抗を念頭に置いたものだ。バイデン大統領は会議冒頭、「われわれは長い協調の歴史がある四つの民主大国だ」と述べ、結束を誓った。

 また、バイデン氏には、イスラム主義組織タリバン復権を許したアフガニスタン駐留米軍撤収が「失策」と批判を浴びる中、目に見える外交成果を必要とする事情がある。ホワイトハウスでの対面会議開催で、トランプ前大統領の「米国第一」から国際協調路線への転換に真剣なことを改めてアピールした格好だ。

 バイデン氏は21日の国連総会の一般討論演説で、同盟の再構築や再活性化を掲げ、「クアッド」推進に言及。健康安全保障など「幅広い課題に取り組む」と訴えた。15日に発表した米英豪3カ国の安全保障枠組み「AUKUS(オーカス)」と並び、クアッドをインド太平洋政策の柱に据える考えを鮮明にしている。(ワシントン時事)。