米中の貿易関係は、トランプ前政権時代に高い関税を掛け合う「貿易戦争」と呼ばれる事態に発展しましたが、去年1月に、中国がアメリカ産の農産品の輸入拡大を図ることなどを盛り込んだ第1段階の貿易協定に合意しました。

その後、ことし1月に発足したバイデン政権は、中国に対する新たな貿易戦略の検討を進めていて、4日、その内容を発表しました。

この中で、トランプ前政権時代に合意した貿易協定について、一定の成果を認めるものの、企業への過剰な補助金や知的財産権の侵害といった中国の構造的な問題を是正させるには不十分だとしています。

一方、今も高い関税をかけあっていることへの対応をめぐって、貿易摩擦を激化させるつもりはないことや、対話を重視する姿勢を強調しています。

こうした新たな方針をもとに、貿易交渉を担当するキャサリン・タイ通商代表が近く、中国側の閣僚との協議を再開する方向で調整しているということです。

バイデン政権としては、高い関税を武器に、相手を揺さぶる前政権の手法を改めて、対話や多国間による連携を通じて、中国に圧力をかける戦略を打ち出した形ですが、貿易慣行が不公正だと指摘されている中国側は反発するとみられ、アメリカが思い描くとおり、交渉が進むかは不透明です。アメリカのトランプ前政権は、中国から不当に安いコストで作られた製品が輸入され、アメリカ国内の雇用が影響を受けているとして、中国の製品に対して、異例ともいえる最大25%の関税の上乗せ措置を繰り返し発動しました。

エスカレートした関税の掛け合いは、「貿易戦争」とも呼ばれ、トランプ政権が発動した関税の対象は、中国からの輸入品の7割近くにおよびました。

こうした状況が続いたあとの去年1月、両国は第1段階の貿易協定に合意しました。

協定は、アメリカが中国に対する関税の一部を引き下げる代わりに、中国がアメリカ産の農産品や工業品、それに石油・天然ガスの輸入を2年間で2017年の時点より、2000億ドル以上増やすとする内容で、トランプ前大統領は農家や労働者に成果をアピールしました。

ことし1月に就任したバイデン大統領は、中国との貿易交渉について、懲罰的な関税措置は行わないことや、多国間の連携によって中国に対抗する方針を示しました。

ただ、政権の発足から今まで、トランプ前政権による関税措置と貿易協定を維持しています。

アメリカ国内の反中感情がおさまらない中で、関税の引き下げや貿易協定の見直しを行えば、弱腰と批判されるおそれがあったためとみられます。

今回、貿易協定の見直しに着手する考えを打ち出した背景には、その数値目標の期限を、まもなく迎えることがあるとみられます。

さらにアメリカの産業界から関税の掛け合いが負担になっているとして、その見直しを求める声が上がっていることへの配慮もあると受け止められています。

バイデン政権は、中国との対話を重視するとしていて、関税の上乗せによって揺さぶりをかけていたトランプ前政権との手法の違いを強調しています。

一方で、中国による国有企業などへの過剰な補助金や知的財産権の侵害が、アメリカにとって不利な競争環境につながっていると問題視していて、貿易協定の見直しでは中国に改革を迫る方針です。

このため、中国の反発は必至なうえ、交渉の中で中国からは高い関税の引き下げを求められることになりそうです。

さらに米中の間では、半導体などのハイテク製品の規制のほか、中国の新疆ウイグル自治区の人権侵害の問題や台湾をめぐって、対立が深まっています。

こうした状況で交渉を進めることになるだけに、バイデン政権が、中国との間で実効性のある新たな協定を結ぶには高いハードルがあります。