[マリウポリ/リビウ/キエフ 21日 ロイター] – ウクライナのゼレンスキー大統領は21日、ロシアが南東部マリウポリのウクライナ軍に武器を捨てるよう要求したことに対し、ウクライナはロシアからの最後通告を受け入れないと表明した。 

ロシア国家防衛管理センターのミジンツェフ所長はモスクワ時間21日午前10時(日本時間同午後4時)にマリウポリから東西に向けて民間人の人道回廊を設定すると表明。モスクワ時間同日午前5時までにこの提案に回答し、武器を捨てるようウクライナ側に要求した。

これに対しゼレンスキー氏は、ウクライナはロシアの降伏要求に決して屈しないとし、首都キエフのほか、マリウポリやハリコフなどの都市がロシアに占領されることはないと表明。「従えば戦争を終結させるという最後通告を突きつけられている。こうした最後通告は受け入れられない」と強調した。

また、戦争終結に向けたいかなる妥協案も、ウクライナの国民投票で決定される必要があると述べた。

ウクライナのメディアによると、ベレシュチュク副首相も「いかなる降伏も、武器を捨てることもあり得ない」とし、「ロシア側に既に伝えた」と述べた。

<攻撃激化>

マリウポリがロシア軍による攻撃の中心地となる中、21日にはハリコフでも攻撃が激化していることが確認された。

ハリコフの市長によると、住宅を中心に数百棟の建物が破壊されたという。「最悪の事態が過ぎ去ったとは言えない。常に爆撃を受けている」と述べた。

また、首都キエフでは20日夜、ショッピングセンターが爆撃を受け、少なくとも8人が死亡した。ロシア軍の攻撃が続く中、キエフのクリチコ市長は21日、外出禁止令を強化し、市民に対し自宅またはシェルターにとどまるよう呼び掛けた。

ロシア国防省のイーゴリ・コナシェンコフ報道官は21日、「ショッピングセンター付近はロケット弾の保管や多連装ロケットランチャーの再装弾のための大型基地として使用されていた」と主張。高精度の長距離ロケット弾がショッピングセンター内のウクライナ製多連装ロケットランチャーや弾薬庫を破壊したと述べた。

ウクライナ軍によると、南部ヘルソンでは親ウクライナ派の抗議集会を解散させるためにロシア軍が銃や音響閃光弾(スタングレネード)を使用したという。

ヘルソンはロシアのウクライナ侵攻開始後に初めて制圧された主要都市で、制圧後、住民グループはヘルソンの中心部で定期的に集会を開き、ロシア軍による占領に抗議している。

<和平交渉再開>

和平交渉は21日に再開され、ベレシュチュク副首相は21日、民間人を戦闘地域から安全に退避させる8つの「人道回廊」の設置についてロシア側と合意に達したと述べた。ただ、その中にマリウポリは含まれていないとし、これ以上の詳細は明かさなかった。

バイデン米大統領は21日、独仏英伊の首脳と電話会談し、ウクライナにおけるロシアの「残忍な」戦術への協調対応を巡り協議した。ホワイトハウスが明らかにした。

一方、欧州連合(EU)外相は21日、ロシアによるウクライナ侵攻を受け、ロシアの原油部門に対する制裁措置の導入について討議したものの、見解は一致しなかった。

EUの外相に当たるボレル外交安全保障上級代表は、ロシア軍によるウクライナ南東部のマリウポリに対する攻撃は「著しい戦争犯罪」と非難。ロシアに対する圧力を高める必要があるとし、記者会見ではEUは「ロシアを孤立させ続ける」としたが、具体的な決断はまだと述べた。