• 米GDPとGDIにギャップ、地区連銀総裁が相次ぎ利上げ継続主張
  • 資産市場に大幅な下げ余地、米20年債不人気、価格転嫁に問題なし
A broker watches a television screen on the trading floor at ETX Capital in London June 9, 2017.  Photographer: Jason Alden/Bloomberg

昨年のジャクソンホールでパウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長が行ったスピーチと、当日の米市場を振り返ってみます。米国株式相場は反発し過去最高値を更新、米国債も上昇、ドルが反落。テーパリングの早期開始を支持する声が事前に相次いだものの、パウエル氏は恐れていたほどタカ派的ではなかったと市場は受け止めました。「本当に見ていなくてはならないのは経済データだ」と当時述べたのは、ワシントン・クロッシング・アドバイザーズのケビン・キャロン氏。26日にはパウエル氏が講演する1時間半前に、米金融当局がインフレ目標の基準値とする個人消費支出(PCE)総合価格指数が発表されます。以下は一日を始めるにあたって押さえておきたい5本のニュース。

大きなギャップ

米経済成長に関する2つの主要指標、国内総生産(GDP)と国内総所得(GDI)は2022年上期にそれぞれ異なる方向を示した。リセッション(景気後退)を巡る議論をさらに複雑にするものだ。4-6月の実質GDP改定値は、個人消費の上方修正を受けて速報値から上方修正されたが、依然として前期比年率0.6%のマイナスだった。一方で4-6月の実質GDIは同1.4%増加。前四半期は同1.8%増だった。GDPの数値は、今年上期に経済の勢いが急失速したことを示唆している。一方でGDIは、それよりは緩やかな景気減速を示している。

利上げ継続を

米金融当局者が相次ぎ利上げ継続の必要性を強調した。ただ、9月の連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げ幅については明言を避けている。カンザスシティー連銀のジョージ総裁は、年次シンポジウムを主催するワイオミング州ジャクソンホールで、政策金利はまだ景気抑制的な水準ではなく、一定期間は4%を上回る必要があるかもしれないと語った。フィラデルフィア連銀のハーカー総裁も、政策金利を景気抑制的な領域まで引き上げる必要があるとの見方だ。アトランタ連銀のボスティック総裁は米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)とのインタビューで、9月のFOMCで0.5ポイントと0.75ポイントのどちらを支持するかまだ決めていないとした。

織り込み不足

ヘッジファンド運営会社ブリッジウォーター・アソシエーツのグレッグ・ジェンセン共同最高投資責任者(CIO)は、実体経済と整合していない株式相場には著しい下落の余地があると指摘した「資産市場の価値は全体として20-25%下落するだろう」と予想。「市場は比較的安定した経済でのインフレ低下を織り込んでいる」とした上で、金利上昇や米金融当局による量的引き締めの影響は織り込まれていないと述べた。量的引き締めと利上げはインフレと経済成長の両方を押し下げるが、「残念ながら、インフレのほうがしぶとく」、結果的に長期債を中心にあらゆる金利が上昇するという。

存在意義

30年以上の停止期間を経て2020年5月に発行が再開された米20年債は、魅力を高めようと取り組んできた米財務省の努力もむなしく、投資家の重要は鈍いままだ。20年債は20年10月、最長30年まである米国債の中で利回りが最も高くなり、政府にとって調達コストが最も高い年限になった。これは現在も続いている。利回りは25日時点で3.53%前後と、30年債利回りをなお20ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)超上回っている。20bpの利回り差は、発行額150億ドルで計算すると、米納税者の債務返済負担が年間3000万ドル増えることを意味する。

価格転嫁

米企業の利益マージンを示す指標が1950年以来の高水準に達した。企業が顧客に請求する価格が、生産や労働のコストを上回るペースで上昇していることを示唆している。利益マージン総額の指標である非金融企業の粗付加価値(GVA)に占める税引き後利益の比率は、4-6月(第2四半期))に15.5%に改善した。1-3月(第1四半期)は14%だった。企業が全般的に原材料や労働力のコスト上昇分を消費者に問題なく価格転嫁できていることを示している。

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