八代尚宏・昭和女子大特命教授

最高裁が夫婦別姓を認めない民法の規定を「合憲」と判断したことを受け、報道陣の質問に答える弁護士ら=東京都千代田区で2021年6月23日、佐々木順一撮影
最高裁が夫婦別姓を認めない民法の規定を「合憲」と判断したことを受け、報道陣の質問に答える弁護士ら=東京都千代田区で2021年6月23日、佐々木順一撮影

出生動向基本調査から読み取れるもの

 日本の人口は2009年をピークに減少基調に入っており、政府の将来人口推計(17年)によると50年ごろに1億人を割り込む見通しだ。しかも、この将来人口推計は前提となる合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産む子ども数、中位推計)を1.4としているが、現実の出生率は1.30(21年)と政府の楽観的な見通しよりも下回っている。人口減少は政府の予想を上回る速度で進行している。

出生率低下の主因は未婚化

 9月9日に「結婚と出産に関する全国調査」が公表された。これは「出生動向基本調査」の特別版で、ほぼ5年ごとに実施されている。報道では、18~34歳の未婚の女性が希望する子どもの人数は平均1.79人と持続的に低下し、初めて2人を下回ったことが大きく取り上げられた。しかし、結婚前の女性に希望する子ども数を聞いても、どれだけの意味があるのだろうか。

 この調査では、むしろ以下の3点が確認されたことが重要である。

 第1は、現実の夫婦の完結出生児数である。夫婦の平均的な子ども数は、過去50年間で、2.2から1.90へと減少しているものの、2割程度に過ぎない。欧米諸国と異なり、日本では結婚せずに生まれる子どもは2%程度なため、出生率低下の主因は、結婚しない男女が増加する未婚化といえる。

 第2に、未婚者の「いつかは結婚するつもり」という結婚希望率である。この比率は前回調査よりも低下しているが、まだ男女平均で8割を維持している。厚生労働省はこれを根拠に、婚姻率の低下は婚姻時期の先送りに過ぎず、いずれ回復する「晩婚化」との希望的な見通しを立てていた。しかし、これが現実には実現していないのはとくに女性の結婚希望率が、「良い相手がいれば」という条件付きであることを、十分に認識していなかったためである。

 しかも、この「良い相手」の条件は年々高まっている。それは、未婚の女性にとってその経済的地位の上昇に比例して「結婚で失うもの」の価値が年々高まっているためだ。それを補って余りあるほどの素晴らしい男性に出会えればよいが、残念ながら、そうした男性の数は限られているため、結婚を希望していても生涯未婚率の低下が生じてしまう。

 第3に、夫婦間の学歴差の壁である。…