[ロンドン 23日 ロイター] – クワーテング英財務相は23日、大規模な減税と大幅な借り入れ増額を発表した。これを受け金融市場には動揺が広がり、ポンドや英債価格が急落した。

減税策では所得税の最高税率を引き下げるほか、法人税率の引き上げ凍結や不動産購入時の印紙税削減を実施。規模は2026/27年までで450億ポンドで、英財政研究所(IFS)によると、1972年以降で最大という。

クワーテング財務相は英経済成長率を向こう5年間で年率1%引き上げることによって減税分の回収が可能としたが、多くのエコノミストはその可能性は低いと懸念している。

一方、今年度の国債発行計画を2341億ポンド(2590億ドル)へと724億ポンド増額。これにより、英短期債が売り優勢となり、5年債利回りの1日当たりの上昇幅は1991年以降で最大となったほか、ポンドは37年ぶりに1.11ドルを下回った。

クワーテング財務相の発表は英国の経済対策が一変したことを意味し、1980年代にサッチャー元英首相が推進した経済政策「サッチャリズム」やレーガン元米大統領が実施した経済政策「レーガノミクス」を想起させる。「トリクルダウン(富裕層や大企業が豊かになると最終的には下位にも富が行き渡るという理論)」経済への回帰との批判も出ている。

クワーテング財務相は、今回の経済対策は「世界中のダイナミックな経済とうまく競争していく方法だ」とし、「停滞の悪循環を成長の好循環に変えていく」とした。

エネルギー価格の補助計画は今後半年間で約600億ポンド規模になる見込み。このほか、ロンドンの金融都市としての競争力を高めるため、銀行員の賞与上限の撤廃するとした。

野党・労働党のレイチェル・リーブス議員は、今回の経済対策は12年間の政権運営でアイデアが出尽くした「捨て身のギャンブル」と非難。「成長も投資も生産性も低く、消費者信頼感も調査開始以来最低となった。上昇しているのはインフレ、金利、銀行員の賞与のみだ」と述べた。

ロイヤル・ロンドン・アセット・マネジメント(RLAM)のマルチアセット部門責任者、トレバー・グリーサム氏は「1970年代のインフレとデフレが交互に起こる状態を彷彿(ほうふつ)とさせるような政策の主導権争いが起こるかもしれない。投資家は乱高下に備えるべきだ」と警告した。