ウクライナ戦争は先週、大きな転換点を迎えたようだ。ロシアのプーチンがウクライナ東部と南部の4州を自国領に編入すると宣言、これに合わせるかのようにゼレンスキー大統領はNATOへの迅速加盟の手続きを開始した。さらに追い打ちをかけるように、東部ドネツクの要衝であるマリンを奪還したと発表した。劣勢に追い込まれたプーチンが停戦交渉の再開を呼びかけると、同大統領は「ウクライナはロシアと対等な関係で共存できるという考え方は変えていない。ただ、(交渉相手は)別の大統領とのみ可能だ」と突き放した。このやりとりを見る限り、ウクライナ戦争の現状は明らかにロシアが劣勢だ。プーチンが強気を装えば装うほど、自らの足元がぐらついている現実が浮かび上がってくる。こうなると逆に窮地を打開するための最終手段としての核兵器使用が現実味を帯びてくる。

先週プーチンはウクライナ東部と南部4州を併合する文書に署名。ロイターによると、その後に赤の広場で開催された併合を祝うテレビ中継のコンサートで、「軍事作戦」に勝利すると誓ったという。どうやって?おそらく核兵器の使用も辞さないということだろう。アメリカが日本で核兵器使用の先鞭をつけたとの認識を示し、核兵器の使用には先例があるとも主張した。プーチンを熱烈に支持するチェチェン共和国のカディロフ首長は「国境地帯に戒厳令を敷き、低出力核兵器を使う強硬策を取るべきだ」(ロイター)と、メッセージアプリのテレグラムに投稿したという。右派を中心にロシア国内では核兵器の使用を求める声が強まっている。予備役の部分動員を機にロシア国内の反プーチンの動きも顕在化している。プーチンの目論見は外れっ放しだ。それだけではない。どんどん深みにはまっていく。

こうした動きについて英国のラダキン国防参謀総長が30日、独自の見解を表明した。それによるとプーチンの4州併合は「ロシアの脆弱性と絶望」を反映しているのだそうだ。そして「プーチンのレトリックはますます無謀になる可能性がある」と指摘する。追い込まれたプーチンは予備役の部分動員令に署名し、4州の併合に踏み切った。その上で核兵器の使用を匂わせ、改めてウクライナとそれを支持している国々に脅しをかけた。そんな恫喝の裏でロシア政府は「動員兵に包帯と防寒具を持参するように呼びかけている」という。動員される予備役がかわいそうだ。そんなロシアについて同氏は「素人的な方法で行われた動員をウクライナ軍が脅威に感じることはない」と断言する。だが、ウクライナが頑張れば頑張るほど、核兵器使用に現実味が帯びる。プーチンを止める手はあるか・・・。