[ワシントン 12日 ロイター] – 中国が2060年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロにする目標を達成するには、電力と輸送の分野で環境関連のインフラと技術向けに最大17兆ドルを投資する必要がある――。世界銀行は12日公表した中国の気候変動・開発を巡る課題をまとめたリポートで、こうした見解を示した。

中国では特に人口が集中し、経済的に重要な沿岸低地沿いの大都市部にとって気候変動は大きな脅威の1つで、このまま気候変動が止まらないと、早ければ30年には国内総生産(GDP)が0.5─2.3%減少しかねないと指摘。対策のための膨大な費用をカバーし、必要な技術革新を促すためには民間投資を呼び込まなければならないと主張している。

世銀の東アジア・太平洋担当バイスプレジデント、マニュエラ・フェッロ氏は「中国の長期的な成長見通しは、経済構造の再調整が進むかどうかに左右される面がどんどん強まっている。つまり単なるインフラ投資から技術革新へ、輸出から国内消費へ、国家主導から市場主導の資源再配分へと切り替わるかどうかだ」と述べた。

中国の二酸化炭素(CO2)排出量は世界全体の27%、温室効果ガス排出量は3分の1に達するだけに、世界的な気候変動目標は中国の低炭素化経済への移行なしに実現できない、と世銀は訴えている。

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こうした移行に不可欠となるのが資源の大規模なシフトや技術革新、新技術によってエネルギー利用の効率性と資源の生産性を高めることだという。

世銀は、中国は(1)低炭素技術生産におけるリターン向上(2)国内の高い貯蓄率(3)グリーンファイナンスでの指導的立場――といった現在手にしている利点を活用できるとしつつも、中国が確実に排出量実質ゼロへの道を歩むには民間部門の参加が「重要」で、より予測可能な規制環境や市場と金融のアクセス改善も必要だと強調した。