[ブリュッセル/パリ 20日 ロイター] – 欧州連合(EU)首脳会議が20日、ブリュッセルで2日間の日程で始まった。高騰するエネルギー価格への対応について協議したものの、ドイツなどが天然ガス価格に上限を設定する案に反対したことにイタリアなどが不満を示し、見解の相違は埋まっていない。

EUで最大の経済規模を持つドイツなど数カ国は、EU15カ国が提唱する天然ガス価格の上限設定案に反対。非公開の討議に詳しい関係者によると、イタリアのドラギ首相は「エネルギーを共有することで連帯感を示す必要があるが、価格抑制に向けた連帯感は皆無だ」とし、「こうした態度はロシアに戦争資金を提供すると同時に、(EUで)景気後退を引き起こすという甚大な被害をすでにもたらしている」と語った。

ロイターが入手した首脳会議の総括文書の草案は「天然ガス取引に関する一時的な動的価格コリドー」と「発電向けの天然ガスの価格上限」の双方について作業を進めるよう、欧州委員会に要請するとしている。

ガス価格上限を巡る見解の相違に加え、エネルギー危機を克服するために経済的に余裕のある国が行う歳出計画についても各国間には溝がある。一部の加盟国はこうした政府支援は不公平で、単一市場の競争力を損なうと反対している。

EU全体として対応がまとめられない中、フランス、スペイン、ポルトガルはこの日、バルセロナ・マルセイユ間に水素とガスを輸送する海上パイプラインを建設すると発表した。

フランスのマクロン大統領とドイツのショルツ首相はEU首脳会議の傍ら個別に会談。仏大統領府によると、両首脳はエネルギー価格の引き下げと欧州の結束を維持するとの共通の見解を確認した。