[東京 25日 ロイター] – 元日銀理事の門間一夫氏(みずほリサーチ&テクノロジーズ・エグゼクティブエコノミスト)は24日、ロイターのインタビューに応じ、次期日銀総裁の下では黒田東彦総裁が推進してきた「異次元の金融緩和」からゼロ金利政策という「普通の金融緩和」への枠組み転換が課題になると話した。ただ、米欧の経済減速懸念から2023年中の政策転換は難しく、早くて24年になるとの見通しを示した。 

門間氏は「異次元」ではなく、イールドカーブ・コントロール(YCC)やマイナス金利のない「普通の緩和」にしていくのがこれからの日銀の課題だと指摘。YCCの弊害として「地域金融機関を中心に余剰資金を運用するのが非常に難しくなり、外債投資などリスクの高い資産にシフトしている」と語った。

23年前半は米欧がリセッションに入る可能性がかなりあり、「グローバル経済の面から日本経済に対して下振れリスクが非常に小さくなってきたと判断されるまでは日銀はなかなか動けないと思う」との見方を示した。23年中の枠組み変更は難しく「24年ぐらいに改めて状況を精査しながらイールドカーブ・コントロールとマイナス金利の撤廃を図るのではないか」と述べた。

想定される新たな政策枠組みとしては、10年金利の目標をなくして短期金利のみを誘導目標とする「日銀が1999年などにやっていたような普通のゼロ金利政策に移行する」と説明した。政策金利を無担保コールレートに戻す方法も一案だと述べた。

門間氏は、物価目標達成の観点から、賃金の持続的な上昇を確認する意味でも24年が重要になるとみている。「23年も賃金の動向は非常に大事になってくるが、仮に23年に賃金がある程度上がったとしてもその年だけではないかとの疑念は晴れない」と指摘。3%かそれに近い賃金上昇が継続的に起こるか、24年も確認する必要があるとした。物価目標の達成が確信できるにしても、逆に2%目標を諦めてせめて副作用だけをなくす修正をするにしても、24年の状況が重要になると述べた。

<YCCの撤廃は一気に、事後対応が重要>

YCCを撤廃する場合、国債利回りが急上昇するリスクがある。門間氏は「事前にフォワードガイダンスや透明性の高いコミュニケーションをしてマーケットに織り込ませることはできない」と述べ、YCCを廃止する場合には日銀が水面下で準備を進めた上で、廃止する理由や今後の対処方針を含め「いっぺんに(対外的に)出す」との見通しを示した。

その上で事後対応の重要性を強調。YCCをやめる場合には、市場の急変動が起きないように特定の水準や金額を明示せずに国債購入を続ける方針を打ち出すことが必要だと述べた。

<日銀は政権浮揚のための「宝の山」ではなく「地雷」>

門間氏は、金融政策の企画担当理事として2013年1月の政府・日銀の共同声明の策定に携わった。門間氏は「誰が総裁になったとしても共同声明は議論にならないだろう」と述べた。共同声明の背後には当時の「デフレ脱却を阻んでいるのは日銀の緩和が足りないからだ」(自民党議員)との根強い批判があり、門間氏は「日銀が変われば日本も変わるというストーリーがあった」と振り返った。

アベノミクス導入当時、日銀による大胆な緩和を演出してデフレ脱却を目指す姿をアピールすることは、政治的に得点を稼げる「得点源」だったが、経済の環境が変わり、岸田政権にとって金融政策はもはやそうした得点源にはなりえないと指摘。むしろ出口の難しさを考えると、政治家にとって日銀の金融政策はあまり関与すべきでない「地雷」になってしまったとし、「日銀は(政権浮揚のための)『宝の山』ではなく『地雷』だ」と語った。   

(和田崇彦、木原麗花 編集:石田仁志)