インフルエンザウイルスのA型とB型で計20種類の亜型に対応するメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンをそれぞれ作り、全部混合して一度にマウスに接種する実験を行ったと、米ペンシルベニア大の研究チームが26日までに発表した。過去に流行した主な亜型のウイルスに感染させたところ、混合状態でも重症化を防ぐ効果が維持された。論文は米科学誌サイエンスに掲載された。

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 この亜型はウイルスが細胞への侵入に使うスパイクたんぱく質(ヘマグルチニン=HA)による分類で、A型ではH1やH3が季節性の流行でよく知られる。mRNAワクチンは新型コロナワクチンで実用化されており、化学合成のため速く、安く大量生産できる。

 現在のインフルエンザワクチンはニワトリの有精卵で増やしたウイルスを不活化して製造しており、時間がかかる上、対応する亜型はA型とB型で流行が予想される計4種類に限られる。研究チームは20種類を混合したmRNAワクチンなら、予想外の亜型が流行しても対応できると指摘している。

 また、この20種類混合ワクチンをフェレットに接種した後、鳥インフルエンザのA型H1亜型に感染させる実験でも、重症化を防ぐ効果がみられた。これはHAに対する中和抗体の作用ではなく、さまざまな免疫細胞の働きが促された可能性があるという。

 研究チームは今後、臨床試験に進むことを目指している。ただ、自然に流行している亜型の種類は少なく、実施には工夫が必要とみられる。