[ワシントン 8日 ロイター] – 米国のバイデン大統領は8日、ロシアで服役中だった米女子プロバスケットボールリーグ(WNBA)のブリトニー・グライナー選手(32)が囚人交換で釈放されたと発表した。

バイデン大統領はホワイトハウスで記者団に対し「グライナー選手の身は安全で、現在飛行機で帰国の途にある」とし、24時間以内に米国に到着すると述べた。また「難しい決断を下し、世界のあらゆる場所で米国民を守ることが、大統領としての私の職務だ」とした。

バイデン氏とハリス副大統領は大統領執務室からグライナー選手と電話で話した。ホワイトハウスはこの電話会談の写真を公開した。

ロシア外務省は、同選手と米国で服役中だったロシアの武器密輸業者ビクトル・ボウト受刑者との囚人交換を行ったと発表した。米政府当局者によると、交換はアラブ首長国連邦(UAE)のアブダビ空港で行われた。

同受刑者は20年近く「ならず者国家」や反政府組織などを取引相手にする世界で最も悪名の高い武器商人だったが、2012年に米国で25年の禁錮刑を言い渡された。釈放後にモスクワに到着した際の様子がテレビで報じられた。

UAEとサウジアラビアは共同声明で、UAE大統領とサウジ皇太子がグライナー選手の解放に向けた調整を主導したと表明。

米ホワイトハウスのジャンピエール報道官はグライナー選手についてサウジなどの国々が問題を提起してくれたことに謝意を表明。ただ、交渉は米国とロシアの間で行われ「仲介はなかった」と述べた。

グライナー選手は2月17日、モスクワの空港で、ロシアで禁止されている大麻オイルを含む電子たばこ用のカートリッジが手荷物から見つかり、逮捕された。8月4日には麻薬所持・密輸の罪で懲役9年の判決を言い渡された。

バイデン大統領はまた、スパイ容疑でロシアで服役中の元米海兵隊員ポール・ウィラン受刑者の解放に向けた活動も継続すると表明。「われわれは決して諦めない」と述べた。

米政権高官は、米側がウィラン氏の釈放に向け複数の提案を行ったが、ロシアがでっち上げたスパイ容疑のせいで異なる対応になったと説明した。

ウィラン氏はCNNのインタビューで、でっち上げの犯罪で逮捕されてからもうすぐ4年経とうとしており、自身の釈放に向け「もっと多くの努力がなされなかったことに大いに失望している」と述べた。

ブリンケン国務長官は「今回の件は、米国民のうち誰を帰国させるかという選択ではなかった。選択肢は一人か、皆無だった」と述べた。

一方、共和党からはこの囚人交換を批判する声も上がっている。

トランプ前大統領はSNSに、「死の商人」とされるボウト受刑者との囚人交換は「愚かで非愛国的な恥さらし」と書き込んだ。

次期下院議長選の共和党候補であるマッカーシー院内総務も「これはロシアのプーチン大統領を利し、米国民の命を危険にさらすものだ」と述べた。