SNSへの投稿を目的とした迷惑行為があとを絶たない。投稿しているのは主に10代の中学生から高校生世代の若者のようだ。いわゆるZ世代と呼ばれる若き青少年たち。飲食店を舞台に迷惑行為を行い、これを撮影して投稿する。誰も考えつかないような迷惑行為にアクセスが急増する。仲間内で自慢し、自己満足に浸る。そんな行為が次から次へと波及していく。3日のこの欄で「スシローで少年Aがぶち壊した日本の『食の安全』」と題して取り上げた。そこでは「主義・主張や考え方が違う多様な人間が一堂に介しても、誰ひとり寿司の『安全性』を疑うことはなかった。その美徳を少年AはSNSへの投稿という誘惑に駆られて無邪気にぶっ壊してしまった」と書いた。一方でいまSNSにはZ世代への批判が集中している。迷惑行為で炎上するSNSが、今度はそれを批判する投稿で盛り上がる。この現象をどう理解すべきか?

Wikipediaによると、Z世代とは1990年代中間から2010年代前半に生まれた世代を指すようだ。この世代の特徴をひとことで言えば「生まれながらのデジタル世代」、いわゆるデジタルネイティブな人たちである。公園で友達と遊ぶよりも部屋に閉じこもってゲームをする、そんなイメージがつきまとう世代だ。SNSは苦もなく使いこなす。FacebookやTwitterはいうまでもない。YouYubeにTikTok、生活自体がSNSに囲まれている。撮影も投稿も簡単にできる時代だ。これを使って自己満足に浸る遊びはいくらでも考え出す。迷惑行為は格好の標的だ。皆がやっている。大人は関心がないし、仲間内の話題にもなる。迷惑行為が世の中の安全や秩序を根底から破壊する反社会的行為だとは、誰も考えもしないしそんなことを連想する知恵もない。飲食店に悪意があるわけでもない。SNSに投稿して炎上させる、自己満足の誘惑にかられて迷惑行為に飛びつく。

アナログの世代が生み出したデジタルネイティブたちのこれがひとつの現実だ。これらの行為が、健全な社会の基盤を破壊する危険性があるだけに放置できない。さて、どうするか。社会は依然としてアナログ世代が主導している。迷惑行為それ自体がアナログ世代の責任でもある。「止めろ」と強制しても止まらないだろう。家庭で学校で地域で、生活しながら、あるいは授業や部活を通してダメだと教える。やるべきだ。法的な規制を強化する。いわゆる一罰百戒だが、これもやった方がいいだろう。だが相手はデジタルネイティブ、彼らが飛びつくやり方のほうがいい。それはやっぱりデジタルだ。アナログ流に言えば“虎穴に入らずんば虎子を得ず”。迷惑行為がいかに反社会的であるか、デジタル教材を作る。ついでに社会の仕組みや安全、安心に関する社会科教材をZ世代に作らせてみてはどうだろうか。アナログ流に言うところの「他人に迷惑をかけない」教えのデジタル版だ。