ロシアがウクライナに侵攻して24日で丸1年となる。これを機にロシアが軍事的な大攻勢を仕掛けるとの観測が強まっている。攻勢はすでに始まっているのかもしれない。だが、今のところ目に見える形でロシアは成果をあげていないようにみえる。それを阻止しているのがウクライナのボロディミル・ゼレンスキー大統領だ。大統領の名前は人々の記憶と歴史に長く刻まれるだろう。プーチンという名が歴史の彼方に消え去ったあとにも、ゼレンスキーの名前は残る。それが歴史の現実だろう。ロイターが侵攻1年を期してゼレンスキーのこの1年を振り返っている。「その頑張りはいつまで続くのか。ウクライナのボロディミル・ゼレンスキー大統領は毎晩、戦意高揚に向けたビデオ演説を配信している。侵略者ロシアとの戦いの渦中にある将兵らを鼓舞し、世界の関心を自国の苦境に繋ぎ止めようと努めている」。以下はロイターによるゼレンスキー論。

「ゼレンスキー氏はこれまで、西側諸国から様々な武器供与を勝ち取ってきた。当初西側は、殺傷能力のある兵器は何であれ供給しない構えだったのが、最近ではウクライナによる反撃を後押しし得る主力戦車の提供を決断。タブーは次々に打破されてきた」。「ロシア軍部隊が国境を越えてなだれ込んで来たとき、ゼレンスキー大統領の『大化け』を予想した人はほとんどいなかった。テレビで活躍するコメディー俳優出身のゼレンスキー氏だが、当時は政治腐敗のまん延と経済の不振、ガバナンスの欠如に対する国民の怒りが高まり、支持率は低下していた」。そのゼレンスキー氏はいまや「世界中で誰もが知る名前となり、ウクライナの抵抗の象徴となっている。国内では支持率が約3倍に上昇し、異例の安定を見せている」のだ。「大統領府で初対面の来客を迎えるときの気さくで温和な人柄に加え、王族に接するときも前線の兵士を視察するときも同じカーキ色の軍用Tシャツ姿で通すゼレンスキー氏の姿は、安定感と不動の意思の強さを印象付けている」。

キーウの政治アナリスト、ボロディミル・フェセンコ氏は、「ゼレンスキー氏は多くの人々を驚かせた。彼のリーダーシップを過小評価していた」と述べている。プーチン氏も相手を見誤ったと語る。「プーチン氏は本格的な戦争ではなく、限定的な特別作戦のつもりで準備していた。ゼレンスキー大統領とウクライナ軍は弱体で、長期的な抵抗は無理だろうと考えていたからだ。その判断は誤りだった」。ゼレンスキー氏を歴的な人物にしたのは、侵攻初日に断固として戦う姿勢を示したことによる。「ロイターは振り返る。「ヤ・トゥート」と、ゼレンスキー氏は言った。「私はここにいる」という意味だ。ロシアが侵攻を開始した直後、ウクライナの命運が風前の灯火となる中で、ゼレンスキー大統領は自分もウクライナも戦いを止めないと宣言した。あれから1年、「大統領は国内に留まった。パニックにも陥らず、直ちに行動を開始した。世界の関心をウクライナに集めた。ウクライナ侵攻という問題を世界に広めた」。