ロシア・プーチンが特別軍事作戦と称してウクライナに侵攻してきのうで丸1年が経過した。侵略戦争に終焉の兆しはまったくない。そんな中で世界はいま、この戦争にどのようにむきあおうとしているのだろうか。以下は侵略戦を見守る世界の景色。まずは国連。国連はきのう総会を開いてロシア軍のウクライナからの撤退を求める決議を採択した。賛成141カ国、棄権32カ国(中国など)、反対7カ国(ロシアなど)。圧倒的多数でロシア軍のウクライナからの徹底が決議された。総会決議に拘束力はないが、プーチンはともかく心あるロシア国民には棘のように突き刺さる決議だ。世界の常識がプーチンの非常識を圧倒的に上回っていることも心強い。それでもプーチンは正義も大義もない戦争を続けるだろう。これからも世界中のウクライナに対する強力な支援が必要だ。それを議論するためにG20、G7の財務省・中央銀行総裁会議がインドで開催された。

まずはG7。日本が議長国。会議を前に記者会見したイエレン米財務長官は、約100億ドルの追加支援を表明し、ウクライナ支援に向け各国に連帯を呼びかけた。G7は新たに390億ドルの支援を取りまとめた。この流れがG20に引き継がれることを期待したいのだが、G20の議長国はインド。同国はロシアから長年にわたって軍事物資の提供を受けている。西側諸国が実施している経済制裁や非難決議にも加わらず、中立的な立場を維持している。今回のG20でも経済制裁は議題として取り上げない意向を示しているほか、戦争という言葉を使わないように参加各国に要請しているとの報道もある。ロシアへの圧力を求める米国、債務国問題に重点を置きたいインド。両国のせめぎ合いが続いている。そんな中でNATOのストルテンベルク事務総長はロイターのインタビューで、「中国がロシアに(殺傷力のある)兵器の提供を計画している兆候を確認した」と発言した。

22日には王毅外交担当国務員がプーチンと会談した。この席で武器供与を約束したかどうかわからない。ただプーチンは両国関係を「新境地」に達したと発言している。習近平主席のロシア訪問も検討されている。中国が武器供与で中立的な立場から新ロシアに転換する可能性もありそうだ。中国にとってもリスクは大きいはずだが、すでに兆候が出ているという。インドとともにロシアへの配慮を見せる南アフリカ。中ロとともに軍事演習を行うなど西側とは一線を画している。ブリンケン米国務長官はメディアのインタビューに応じ「ロシアとの連携から離れつつある軌道にあるよう見える」としながらも、「変化は一夜にして起こらない」と発言した。ロシアはその昔、南アのアパルトヘイト政策に反対、民主側陣営を支援した。これに対して米国は差別政策を推進する政権を支持していた。まさに「変化は一夜にして起こらない」のだ。ドイツはこの1年で、親ロ派政策を反ロシアに転換した。インド、南アは変わりつつある。中国はどうか。どの国の政権にも、中長期的かつ歴史的な視点が必要だろう。