[東京 10日 ロイター] – 納車が大幅に遅れている日産自動車の電気自動車(EV)「アリア」について、3月以降の生産台数が目標の7割程度にとどまる見通しであることが分かった。折からの半導体不足に加え、電動車市場の拡大を見据えて導入した最新鋭の自動化生産ラインにも問題が発生しており、量産が想定通り進んでいない。事情を知る複数の関係者が明らかにした。

アリアは、日産が「リーフ」に続く主力EVとして投入したクロスオーバー車。2030年までにEV19車種を投入する計画の先行きを占う上での重要な世界戦略車で、当初は21年に発売する予定だった。だが、半導体不足や供給網(サプライチェーン)の停滞で22年に延期され、販売開始後も生産ラインの問題が重なり、納車に時間がかかっている。

日本では昨年8月以降、標準グレード車「B6」(2輪駆動モデル)の受注停止が続いており、日産は納車に「1年かかる」と説明している。

関係者3人とロイターが確認した計画によると、3─5月のアリアの生産台数は目標の3分の2にとどまる。

関係者2人によれば、生産目標は1日当たり約400台。年間で10万台以上、月間では約9000台に相当する。しかし、2月中旬までに策定された生産計画によると、3月は6900台を下回り、4月は約5200台、5月は約5400台を見込んでいる。

関係者の1人は「現在の生産能力を踏まえ、2月中旬には3月と23年度の生産計画の見直しを決めたため、今後も週次で減産調整が発生する見込み」と話している。

日産の広報担当者は、生産台数目標や足元の台数についてコメントを控えた。

<塗装工程が難航>

関係者2人によると、問題の1つはアリアを量産している栃木工場(栃木県上三川町)に導入した革新的な生産ライン。約330億円を投じてEV、ハイブリッド車、ガソリン車を問わずパワートレイン(駆動装置)ユニットを同じ工程で一括自動搭載できるシステムなどを取り入れた。日産は「インテリジェント・ファクトリー」と名付け、国内外の工場に順次展開しようとしている。

しかし、新たな生産ラインでは塗装工程が難航。鉄製のボディと樹脂製のバンパーを同時に塗装する世界初の試みで、品質と効率を高めるとともに、二酸化炭素排出量を減らすために導入したが、本格的な稼働に手間取っている。関係者の1人は、計画段階ではうまくいくように見えたと説明。実際に導入してみると「極めて、極めて難しい課題」だったことが分かったと話す。

日産の広報担当者はロイターの取材に対し、半導体の供給制約と新型コロナウイルス感染拡大による部品不足により、アリアの生産は課題に直面していると説明。さらに栃木工場の新たな生産方式に触れ、「塗装工程における生産能力の向上には時間を要している。本来の能力を取り戻すため鋭意努力をしている」とした。

関係者の1人によると、1月に中国で起きた化学工場の火災もアリアの生産計画に影響を及ぼす可能性がある。無錫市に拠点を置く華友微電子の同工場は電子部品に使う金属メッキを手掛けており、工場が閉鎖されたことで供給に支障が出ている。

華友微電子はロイターの取材に対し、上海の第2工場に生産を移管したとコメント。「顧客のため生産回復に努めている」とした。

<日産復活の象徴となるか>

日産が10年に投入した世界初の量産型EV「リーフ」は市場の開拓を主導してきたが、現在は後発のEV専業テスラなどが先行。日産の22年世界販売に占めるEVの割合は4.5%だった。

日産の経営はその間カルロス・ゴーン元会長の解任などで混迷。販売台数は減少し、収益性も低下した。S&Pグローバル・レーティングは7日、日産の長期発行体格付けを投機的水準に相当するBBプラスに1段階引き下げたと発表した。

米カリフォルニア州ダブリンにある日産販売店には、試乗用のアリアが1台ある。ゼネラル・マネージャーのマリオ・ベルトラン氏は、春にはもう数台届く予定とし、「本当にいい車だ」と語る。大胆な外観と日本の行燈のような内装照明が好評で、テスラの予約をキャンセルした客もいたという。

「ビートルでフォルクスワーゲンが復活したように、アリアは日産を復活させると思う」とベルトラン氏は話している。

(取材協力:ダニエル・ルーシンク、ベン・クレイマン 編集:久保信博、ケビン・クロリッキ)