参院予算委員会で立憲民主党の小西洋之氏の質問に答弁する高市早苗経済安全保障担当相=20日午後、国会内
参院予算委員会で立憲民主党の小西洋之氏の質問に答弁する高市早苗経済安全保障担当相=20日午後、国会内

 放送法が定める政治的公平性に関する総務省文書を巡り、国会の議論が深まりを欠いている。高市早苗経済安全保障担当相が文書を「捏造(ねつぞう)」と断言し、自身が誤りなら閣僚・議員を辞職すると表明。首相官邸の圧力の有無ではなく、文書が正確か否かに論戦が集中しているためだ。

高市氏「質問しないで」発言撤回 委員長異例の注意、謝罪応ぜず―総務省側、文書「捏造認識ない」・参院予算委

 「もう潔く辞職すべきだ。いまさら正確性の議論なんかしていてはいけない」。文書を最初に入手した立憲民主党の小西洋之氏は20日の参院予算委員会で、政治的公平性の議論に進めないことにいら立ちを隠さなかった。

 総務省は従来、政治的公平性について「番組全体を見て判断する」と解釈してきたが、高市氏は総務相時代の2015年5月の国会答弁で「一つの番組でも判断できる」との解釈を追加。文書には14年11月から礒崎陽輔首相補佐官(当時)が解釈見直しを総務省に働き掛け、安倍晋三首相(同)が了承した経過が記されている。

 総務省が行政文書と認めた78枚のうち、高市氏が捏造だと主張するのは4枚。中でも国会の議論は、15年2月13日の「大臣レク(説明)」で高市氏が礒崎氏と総務省のやりとりについて報告を受けたと記された1枚の真偽に集中している。

 高市氏は答弁を徐々に後退させている。2月のレクについて当初は「受けたはずもない」と明言していたが、先週には「NHK予算に関するレクは受けた可能性はあり得る」と述べた。

 それでも「捏造」の主張は譲らない。調査を進める総務省は20日の予算委で、2月のレクで説明に当たった当時の情報流通行政局長ら職員3人が「捏造の認識はない」と話したと説明。しかし高市氏は閣僚辞任を迫られると、当時の大臣室の職員2人が「レクがあったとは思わない」「記憶がない」と語ったとして、応じなかった。

 こうした議論のあおりを受け、立民が本丸と位置付ける官邸の圧力や放送法の解釈に関する議論は進まない。高市氏を巡る論争に決着をつけるため、立民は礒崎氏ら関係者の参考人招致を要求。しかし、要求実現のカードになる審議拒否は控えており、与党は応じていない。

 23年度予算案は遅くとも来週成立する。予算委が終われば政府追及の場が少なくなるため、立民は「予算委でどこまで追及できるかが勝負だ」(国対幹部)と焦りを募らせる。立民は20日、総務省に対し、政府内調査の「最終報告」を22日に提示するよう要求した。