アンスティー・クリストファー

  • 米国は国際的影響力を失いつつあると指摘-IMF・世銀会合で
  • 「中国からは空港が得られる。米国から得られるのは講釈だ」
Larry Summers, president emeritus and professor at Harvard University. Photographer: Hollie Adams/Bloomberg

サマーズ元米財務長官は、米国が国際的な影響力を失いつつある「不吉な」兆候に警鐘を鳴らした。米国以外の複数の大国が結束し、まだ立場を確立していない国・地域から支持を得ているという。  

  ブルームバーグテレビジョンの番組でサマーズ氏は「分断の受け入れが進んでいる。そしてさらに問題なのは、われわれの陣営が組むのにベストではないとの意識が高まっていることだ」と発言。ワシントンで開催された国際通貨基金(IMF)・世界銀行の春季会合に合わせてインタビューに応じた。

  今年の春季会合では、米国など先進国陣営が中国を含む戦略的競合相手から距離を置く形でのサプライチェーン再構築を目指す中、世界経済の分断に対する警告が主なテーマだった。  

  サマーズ氏は、ある途上国の人からこう言われたという。「中国からは空港が得られる。米国から得られるのは講釈だ」と。

  IMF・世銀の春季会合中、ブラジルのルラ大統領は中国を訪問。世界12位の経済規模を持つブラジルと中国の緊密な関係を浮き彫りにするものだ。

  同会合の前には、石油輸出国機構(OPEC)と非加盟の主要産油国から成る「OPECプラス」がサプライズ減産を決定。サウジアラビアやロシアなどが構成するOPECプラスの減産は、米国やユーロ圏など先進各国・地域のインフレ抑制の取り組みを難しくする。

  また中東では最近、犬猿の仲だったサウジとイランの和解を中国が仲介。サマーズ氏は、中東とロシア、そして中国の関係深化は「米国にとって大きな課題だと私が考えていることの象徴だ」と述べた。

  ハーバード大学教授でブルームバーグテレビジョンに定期出演している同氏は「民主主義へのコミットメント、ロシアによる侵略への抵抗など、われわれは歴史の正しい側にいる」と指摘。「しかし、正しい側はやや寂しく見える。歴史の正しい側にはいないように見える勢力が、さまざまな構造でますます結束しつつある」と語った。

原題:Summers Warns US Getting ‘Lonely’ as Other Powers Band Together(抜粋)