[ジャクソンホール(米ワイオミング州) 25日 ロイター] – 欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁は25日、世界経済の現状の変化がインフレをあおるリスクがあるという見解を示した。

ラガルド総裁は米ワイオミング州で開催中の経済シンポジウム(ジャクソンホール会議)で講演し、労働市場は大きな変化を遂げ、エネルギー転換は新たな投資ニーズを生み出し、地政学的対立の深まりは保護主義やサプライチェーンの制約につながると指摘。「これら多岐にわたるシフトの全てが永続的かどうかは現段階では明らかではない」としつつも、「多くの場合、こうした影響が当初の予想よりも持続的であることはすでに明白だ」と語った。

その上で「新たな環境は、パンデミック前よりも大きな相対的価格ショックの舞台となる」とし、中銀はこれらの変化が長期化する可能性を受け入れる必要があるとの認識を示した。

さらにこうした経済的実体の変化は、一段と持続的な物価上昇圧力につながるインフレのボラティリティーを生み出す恐れがあり、賃金は繰り返し物価を「追いかける」状況となり、その影響は中期インフレに「忍び寄る」リスクがあるという見解を示した。

また、ECB政策当局者がインフレ率鎮静化に成功したと結論付けるには、タイムリーかつ持続可能なインフレ低下が必要だとした。インフレを適時に中期目標である2%に回帰させるため、必要に応じ、十分に制約的な金利水準に維持する必要があるとも述べた。

ラガルド氏は、ECBの2%インフレ目標を変更することに否定的で、今年もインフレ率は鈍化し、年末までのインフレ率は変化すると「確信している」との見通しを示した。

ECBの予測では、今年第4・四半期のインフレ率は2.9%で、現在の5%を超える水準から大きく低下し、その後24年を通して3%で推移した後、25年には目標に近づくとされている。

また、ラガルド氏はブルームバーグとのインタビューで「われわれは賃金の動向に最新の注意を払っていく。なぜなら物価が上昇している経済の中で最も好調な部分は明らかにサービス業であり、サービス業は労働集約的だからだ」と指摘。「労組や企業団体が比較的短期間でインフレ率が2%に戻ることを理解すれば、それに見合わない賃金やマージンの引き上げによってインフレを煽ることを望まず、インフレ率は2%に回帰する」との認識を示した。