▽【米国市況】株下落、トランプ関税への不安根強く-ドル142円台前半

Rita Nazareth

  • FOMC政策決定を控えて市場ではリスク回避姿勢広がる
  • ドル指数は3営業日続落、円は一時142円36銭に上昇
The Nasdaq MarketSite in New York, US, on Tuesday, April 22, 2025. US stocks pared gains as traders weighed earlier remarks from Treasury Secretary Scott Bessent on the US-China tariff standoff.
The Nasdaq MarketSite in New York, US, on Tuesday, April 22, 2025. US stocks pared gains as traders weighed earlier remarks from Treasury Secretary Scott Bessent on the US-China tariff standoff. Photographer: Michael Nagle/Bloomberg

6日の米株式相場は下落。米連邦公開市場委員会(FOMC)政策決定を翌日に控え、ウォール街ではリスク回避のムードが広がった。関税を巡るトランプ大統領の発言は貿易戦争が経済に打撃を及ぼすとの懸念を払拭するには至らなかった。国債利回りが低下し、ドルは下落。円は1ドル=142円台前半に上昇した。

株式終値前営業日比変化率
S&P500種株価指数5606.91-43.47-0.77%
ダウ工業株30種平均40829.00-389.83-0.95%
ナスダック総合指数17689.66-154.58-0.87%

  トランプ氏は、関税引き上げを回避したい貿易相手国に対し、関税水準を決めるのは自分だと述べ、度重なる交渉に従事するというアプローチから距離を置く姿勢を示した。

関連記事:トランプ大統領、貿易の条件は自分が決める-関税協定は必要ない (1)

  UBSグローバルのマーク・ヘーフェル氏は「今後数カ月で関税による店頭商品の値上がりが鮮明になるのに伴い、景気は弱含むと想定される。ただ貿易交渉の進展が見られれば、市場は短期的な経済の弱さについては見て見ぬふりをする公算が大きい」と語った。

  ただ、S&P500種が記録的な上昇を遂げた後だけに、現在の株価バリュエーションでは上値余地はほとんどないとゴールドマン・サックス・グループのストラテジストはみている。またJPモルガン・チェースのストラテジストは米国資産について、「逃避先としては良い場所ではない」と指摘。HSBCのマックス・ケトナー氏は「ファンダメンタルズが依然として暗い」として、戦術的に慎重姿勢を維持している。

  ペッパーストーンのマイケル・ブラウン氏は「貿易の不確実性が続く中で楽観ムードも漂う株式市場では上値余地が乏しくなりつつある一方、まだ十分に織り込まれていない巨大な下振れリスクが存在する」と述べた。

  過去2週間の株式市場の急回復は、典型的なベアマーケット・ラリー(弱気相場での株価上昇)であり、相場の急激な変動は、どちらの方向に動いてもほぼ全ての投資家が損失を被る可能性が高いことを意味する。

   ゴールドマン・サックスのストラテジスト、ピーター・オッペンハイマー氏は「米国が関税の方針を迅速に撤回し、経済への影響が長期化しなければ、下振れリスクは限定的だろう。ただ、現在の株価バリューエーションでは、上昇余地も限定的とみられる」と述べた。

関連記事:市場の不安定な変動、あらゆる投資家が損失の可能性-ゴールドマン

  ヘッジファンド運営会社チューダー・インベストメントの創業者ポール・チューダー・ジョーンズ氏は、トランプ大統領が対中関税を半分に引き下げると予想しつつ、それでもなお、株式相場はさらに安値をつける可能性があるとの見通しを示した。

  ジョーンズ氏はCNBCで、「関税に固執するトランプ氏、利下げをしないことに固執する連邦準備制度理事会(FRB)がいる。これは株式市場にとって良いことではない」と述べた。

関連記事:チューダー創業者、対中関税の半減「確信」も株価下落の可能性を指摘

国債

  米国債相場は上昇(利回りは低下)。420億ドル規模の10年債入札が堅調だったことで、米国資産への需要に対する懸念が和らいだ。トランプ関税への根強い警戒心も国債相場の押し上げ材料。

国債直近値前営業日比(bp)変化率
米30年債利回り4.80%-3.5-0.73%
米10年債利回り4.30%-4.7-1.08%
米2年債利回り3.78%-5.0-1.29%
  米東部時間16時39分

  10年債入札では、最高落札利回りが4.342%と、入札前取引(WI)水準を約1ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)下回り、想定以上の需要を集めたことを示した。

  FRB当局者らはこれまでのところ、4月に発動した貿易政策が経済に与える影響を見極めてから、政策金利の変更を検討したい考えを見せてきた。トランプ大統領が利下げを求めてパウエル議長への批判を繰り返しているものの、今回のFOMCでは金利が据え置かれるというのが大方の予想だ。

  市場は年内に0.25ポイントの利下げを3回織り込んでおり、最初の利下げは9月との見方が多い。

関連記事:【焦点】FOMC、金利据え置きの公算大-「不確実性」が最大の課題

為替

 外国為替市場ではドル指数が3営業日続落。投資家は7日のFOMC政策発表に身構えている。

為替直近値前営業日比変化率
ブルームバーグ・ドル指数1216.34-4.43-0.36%
ドル/円¥142.41-¥1.29-0.90%
ユーロ/ドル$1.1370$0.00550.49%
  米東部時間16時42分

  ブラウン・ブラザース・ハリマン(BBH)は、ドルが短期的に値固めの局面に入ったとみているが、さらなる下落リスクも見込んでいる。

  同社のシニアストラテジスト、エリアス・ハダッド氏は「ファンダメンタル面ではドルに厳しい環境が続いている」と分析。「トランプ政権はドル安への暗黙の支持を示唆しており、米経済はスタグフレーションのリスクに直面している。貿易戦争によって米政策の信頼性も損なわれている」と語った。  

  ダラ・マハー氏らHSBCのストラテジストは顧客向けリポートで「ドルは概ね横ばいの動きを続けており、市場参加者は4月の混乱の後、真に決定的な材料を見つけられずにいる」と指摘。「7日のFOMC政策決定を前に市場は様子見姿勢にもなっている。投資家は、関税による供給ショックに伴うインフレと経済成長のバランスを米金融当局がどう調整していくのかについて、より明確な見通しが得られることを望むだろう」と述べた。

  円相場は対ドルで上昇。一時は約1%高の1ドル=142円36銭を付けた。

ドル・円相場の推移

  RBCキャピタル・マーケッツのアナリスト、ジョージ・モラン氏は、円がさらに上昇する可能性を踏まえ、スイス・フラン売り・円買いのポジションを推奨。「市場はスイス国立銀行(中央銀行)がデフレリスクに対応するために為替介入や金利政策、あるいはその両方を講じる必要性を過小評価している」とリポートで指摘した。

原油

  ニューヨーク原油相場は大幅反発。米国の原油生産が数カ月先、減少に転じる兆候が示され、4年ぶり安値から持ち直した。

  ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)は前日までの6営業日では9%余り下げていた。パーミアン盆地で最大の独立系石油会社、ダイヤモンドバック・エナジーは通期の生産見通しを下方修正し、数カ月先には米国のシェールオイル生産が減少するとの予想を明らかにした。

  米原油生産の減少は世界的な供給超過を緩和する方向に働く。石油輸出国機構(OPEC)と非加盟産油国で構成される「OPECプラス」は、予想を上回るペースでの増産を決定した。ダイヤモンドバックは米業界全体でオンショア掘削装置の稼働率が6月末までに10%近く低下すると予想。トラビス・スタイス最高経営責任者(CEO)はリポートで、米国の生産は「転換点」を迎えていると指摘した。

Oil Rises After Trading in Oversold Territory | Brent's 9-day RSI had fallen below 30, signaling possible correction
上段:ブレント原油、下段:ブレント原油の相対力指数(9日ベース)出所:ICE、ブルームバーグ

  エネルギー省がOPECプラス会合前にまとめたリポートでは、今年の国内原油生産見通しが下方修正された。国内供給見通しの下方修正が今後も続くことが示唆された。

  原油価格は今年、大きく下落。トランプ米大統領が仕掛けた貿易戦争で需要見通しが圧迫されたほか、OPECプラスが減産方針を転換したことが背景にある。OPECプラスは週末の会合で、6月からの産油量をさらに引き上げることで合意。サウジアラビアは割り当て違反が続くようであれば、さらなる産油量引き上げもあり得ると警告した。

関連記事:OPECプラスは一段の増産も、割り当て違反続くなら-サウジが警告

  フォレックス・ドット・コムの市場アナリスト、ラザン・ヒラル氏は「サウジが好む原油価格のレンジが90ドルに近いことを考慮すると、50ドル近辺の価格に対する同国の我慢は限度に近づいていることがうかがわれる」と指摘。「しかしながら供給拡大を通じて、特にOPEC非加盟国などから市場シェアを取り戻せば、そうした損失を埋め合わせる助けにはなるかもしれない」と述べた。

  トランプ氏は高い関税のために米中両国のビジネスがほぼ静止状態にあるとして、いずれは中国への関税を引き下げることに意欲を示した。しかし習近平国家主席と話し合う計画は現時点ではないとも述べた。習主席は今週、ロシアを訪問しプーチン大統領との緊密な関係を国際社会に示す。

関連記事:習氏がロシア訪問へ-国際舞台で中ロの緊密さ演出、米国優位崩す狙い

  中東情勢に目を向けると、イスラエル軍がイエメンの首都サヌアの空港を空爆。2日前にはイエメンの親イラン武装組織フーシ派が、イスラエルの主要国際空港付近をミサイルで攻撃していた。米国とイランによる4回目の核協議を控え、新たな緊張が広がった。

関連記事:フーシ派「降伏した」、米国は攻撃停止するとトランプ氏主張 (1)

  9日ベースの相対力指数(RSI)でみた北海ブレント原油は、売られ過ぎの領域に入った。またボリンジャーバンドの下限を割り込み、下落ペースが速すぎる可能性を示唆した。

  ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物6月限は、前日比1.96ドル(3.4%)高い1バレル=59.09ドルで終えた。ロンドンICEの北海ブレント7月限は3.2%上げて62.15ドル。

  ニューヨーク金相場は大幅続伸。投資家はベッセント米財務長官の発言を消化しつつ、明日発表されるFOMCの結果を待っている。

  ベッセント長官は議会証言で、貿易相手国との交渉では米国に「非常に良い」オファーが提示されたと述べ、早ければ今週にも何らかの合意が発表される可能性はあると強調。また米国からの輸出品に対する関税が「大幅に引き下げられる」可能性を指摘しつつ、リセッション(景気後退)を示唆する要素は最近のデータに見当たらないとも述べた。貿易面での緊張が世界経済を減速させるとの懸念から、金価格は数週間前から上昇してきた。

  今回のFOMCでは金利が据え置かれるというのが大方の予想だ。金などの貴金属投資は利息を生まないため、借り入れコストが下がると買いが入る傾向がある。

  トランプ氏の貿易政策に伴う市場の混乱で、金は代替資産としての地位を一層確かにした。金価格は年初から25%余り上昇し、4月には1オンス当たり3500ドルを上回り過去最高値を更新した。値上がりは逃避買いのほか、中国での投機需要や中央銀行による購入に支えられた。最近では騰勢が幾分弱まっている。

  金スポット価格はニューヨーク時間午後1時50分現在、前日比81.85ドル(2.5%)高い1オンス=3415.97ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物6月限は、100.50ドル(3%)高い3422.80ドルで引けた。

原題:Stocks Fall as Tariff Angst Spurs Gains in Bonds: Markets Wrap

Stocks Pare Declines Amid US Trade-Deal Hopes: Markets Wrap

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Gold Gains as Investors Digest Bessent Comments, Await Fed