▽東京消費者物価は23年1月以来の高い伸び、食料品中心に価格転嫁進む

伊藤純夫

  • コアCPIは3.6%上昇と2カ月連続で3%台-市場予想を上回る
  • コアコア3.3%上昇と昨年1月以来の高水準、総合3.4%上昇と横ばい

全国の先行指標となる東京都区部の消費者物価指数(生鮮食品を除くコアCPI)は、5月に2023年1月以来の高い伸びとなった。食料品を中心にコスト上昇の価格転嫁が進んだ。総務省が30日発表した。

  コアCPIは前年比3.6%上昇と前月(3.4%上昇)から伸びが加速。市場予想(3.5%上昇)を上回った。3%台は2カ月連続で、日本銀行の目標の2%を上回るのは7カ月連続。生鮮食品を除く食料が6.9%上昇と上昇率が拡大した。エネルギーは8.7%上昇と前月から伸びが縮小した。

  エネルギーも除くコアコアCPIは3.3%上昇と前月(3.1%上昇)から伸びが拡大し、昨年1月以来の高水準となった。市場予想は3.2%上昇だった。

  5月の東京CPIでは食料品を中心に価格転嫁の継続が確認された。しかし、トランプ米政権の関税政策の影響で内外経済は減速が見込まれており、物価にも下押し圧力がかかる見通しだ。一時停止状態にある日銀の追加利上げのタイミングを探るため、経済・物価動向を慎重に見極めていく局面にある。

  SMBC日興証券の丸山義正チーフマーケットエコノミストは、基調的物価はサービス価格が上向いてきていることから「オントラックに近いという評価になる」と指摘。日銀の利上げを巡る最大の課題は関税による影響の見極めだとし、基調的物価が条件を満たすだけでは「判断のタイミングが定まってこない」と語った。

コアCPIは23年1月以来の高い伸び | 3%台は2カ月連続

  統計の発表後、東京外国為替市場では円買いが優勢となっており、対ドルでは一時1ドル=143円台半ばまで上昇している。

  総合指数は3.4%上昇と伸びは変わらず。市場予想と一致した。生鮮食品の伸び縮小を受けて、2021年8月以来、3年9カ月ぶりにコアCPIを下回った。植田和男総裁は27日の国際会議でのあいさつで、「食料品価格の上昇が基調的な物価上昇率に与え得る影響に注意する必要がある」との認識を示していた。

  賃金動向を反映しやすいサービス価格は2.2%上昇となり、前月の2.0%上昇からプラス幅が拡大した。今年の春闘の賃上げ率は、昨年に続いて高水準となっており、賃金から物価への転嫁の進展が焦点となっている。

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