▽【米国市況】株は上昇、商務長官の発言を好感-ドルは144円台後半
Rita Nazareth
- S&P500種は最高値まで2%足らず、テスラが大型株をけん引
- 米中交渉は詰めの作業中、11日のCPIや12日の30年債入札に注目
10日の米株式相場は上昇。米中の通商交渉が注目を集める中、ラトニック商務長官が「交渉は実に順調に進んでいる」と発言したことを好感し、買いが入った。
株式 | 終値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
S&P500種株価指数 | 6038.81 | 32.93 | 0.55% |
ダウ工業株30種平均 | 42866.87 | 105.11 | 0.25% |
ナスダック総合指数 | 19714.99 | 123.75 | 0.63% |
S&P500種株価指数は過去最高値にあと2%未満に迫った。テスラが大型株の上昇をけん引した。

英ロンドンで開催されている2日目の米中通商協議は、現地時間の10日夜になってもまだ交渉が続いている。両国は事務的な詰めの作業を行っており、協議は夜遅くまで続く可能性があると、米財務省当局者が明らかにした。10日中に協議が終了するかどうか質問されると、ラトニック氏は「必要であれば11日もここに残るが、今夜中に終わることを願っている」と答えた。
関連記事:米中通商協議2日目、詰めの作業続く-「交渉は順調」とラトニック氏
11日に発表される5月の米消費者物価(CPI)は前年同月比の伸びが加速すると予想されている。企業が輸入関税の引き上げを徐々に価格転嫁する中で、特に財の価格上昇が顕著になるとみられている。食品とエネルギーを除くコアCPIは前月比0.3%上昇と、4カ月ぶりの大幅な伸びになる見通し。前年同月比では2.9%上昇と、今年に入って初めて加速するとみられている。

22Vリサーチが実施した調査によると、CPIに対する市場の反応は42%が「リスクオン」になると回答。33%が「まちまち」、25%が「リスクオフ」だった。リスクオンが選好されたのは、2024年8月以来だという。
米国債
米国債市場では長期債が上昇する一方、短期債は下げた。
国債 | 直近値 | 前営業日比(bp) | 変化率 |
---|---|---|---|
米30年債利回り | 4.93% | -1.0 | -0.21% |
米10年債利回り | 4.47% | -0.2 | -0.04% |
米2年債利回り | 4.02% | 1.7 | 0.42% |
米東部時間 | 16時53分 |
3年債入札への反応は鈍かった。最高落札利回りは3.972%と、入札前取引の締め切り時点での3.968%を上回り、4月以来の高水準となった。12日には注目の30年債の入札が予定されている。
BMOキャピタル・マーケッツのイアン・リンジェン氏は「5月のインフレ指標と今後の国債入札は、取引を活発化させる可能性のある材料だ。貿易戦争の当初の影響と現在の環境下における米国債の需要について、市場の共通認識を深めることにつながるだろう」と述べた。

足元では、長期債利回りが世界的に上昇している。債務と財政赤字の急拡大に対する懸念が背景にあり、より高いプレミアムを要求する動きが加速している。
BNPパリバのグニート・ディングラ氏は、長期債利回りが短期債利回りを上回るペースで急速に上昇し続けると予想する投資家は、損失を被るリスクがあると警告。30年債は既に財政状況の悪化を織り込んでおり、入札で強い需要が集まる、あるいは財政赤字懸念が和らげば、反発する可能性があるとの見方を示した。

為替
外国為替市場では、ドル指数が小動き。米中通商協議が2日目に入る中、欧州時間早朝につけた高値から伸び悩む展開となった。今後の米金融政策を占う上で、今週発表される米CPIに注目が集まっている。
対ドルでの円相場は下落。ニューヨーク時間の朝方は前日終値付近でもみあっていたが、1ドル=145円近辺に下げた。
為替 | 直近値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
ブルームバーグ・ドル指数 | 1210.59 | 1.19 | 0.10% |
ドル/円 | ¥144.90 | ¥0.33 | 0.23% |
ユーロ/ドル | $1.1424 | $0.0002 | 0.02% |
米東部時間 | 16時53分 |
マネックスのストラテジストはリポートで「米当局は中国が『非常にタフ』だと繰り返しているが、今回の交渉で共通点が見いだされることを投資家は慎重ながら楽観視している」と指摘した。
マッコーリーのティエリー・ウィズマン氏はブルームバーグテレビジョンで「ドルは長期的な下落トレンドにある」と発言。「ドルの基本的な見通しは暗く、12年に及ぶ実質ベースのドル高基調が終わろうとしている」と語った。さらに「ドルのブランド価値はここ数カ月で確実に低下している」と述べ、その原因として、米国の政策を巡る「不確実性、唐突さ、攻撃的な姿勢」を挙げた。
パシフィック・インベストメント・マネジメント(PIMCO)は最近の見通しの中で、ドルに代わる通貨が存在しないことから、世界の基軸通貨としての地位は維持されるものの、長期的な弱気相場は避けられないとの見方を示した。
関連記事:ピムコ、世界の5-10年債を選好-ドルは基軸通貨維持も下振れに警戒

原油
ニューヨーク原油先物相場は、米中協議の結果を待つ中で反落。
ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物は1.5%上昇する場面もあったが、その後に下落して1バレル=65ドルを割り込んで引けた。
山林火災の影響で操業できなくなっていたカナダのオイルサンド生産施設が一部再開されたことも、相場の下押し要因となった。
一方、石油輸出国機構(OPEC)のガイス事務局長は、カナダのカルガリーでの会議で、石油需要の「ピーク」は当面見えないと述べた。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物7月限は、前日比31セント(0.5%)安い1バレル=64.98ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント8月限は17セント下落し、66.87ドルで引けた。

金
金スポット相場は前日比ほぼ変わらず。米中通商協議が2日目に入り、関税措置の行方を見極めたいといったムードが強かった。
市場関係者は12日に実施予定の米30年債入札にも注目している。入札が不調に終われば、安全資産を求める動きから金への需要が高まる可能性がある。

スポット価格はニューヨーク時間午後4時9分現在、前日比0.1%未満上昇し、1オンス=3327.32ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物8月限は11.50ドル(0.3%)安の3343.40ドルで終えた。
原題:S&P 500 Gains as Lutnick Signals US-China Progress: Markets Wrap(抜粋)
Dollar Pauses Ahead of Inflation as US, China Talk: Inside G-10
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