Irene Garcia Perez、Jonathan Randles、浦中大我、Yusuke Maekawa
- JA三井リースは農林中央金庫と三井物産の合弁事業
- 子会社のカツミ・グローバル通じたエクスポージャー

農林中央金庫と三井物産の合弁事業が、経営破綻した自動車部品メーカーの米ファースト・ブランズ・グループに対し、17億5000万ドル(約2700億円)規模のエクスポージャーを抱えていることが、裁判資料で明らかになった。
テキサス州の裁判所で先週開かれた審問で、カツミ・グローバルの弁護士は、同社がファースト・ブランズに対し同額のトレードファイナンスを提供していたと述べた。この発言内容は、10月1日の審問記録が8日遅くに裁判所へ提出されたことで明らかになった。
カツミ・グローバルの親会社は、農林中央金庫と三井物産の合弁事業であるJA三井リース(JAML)となっている。
弁護士のチャールズ・ケリー氏によると、カツミは数十万件に及ぶ買い取り債権に関して、買い手側の代理人を務めている。ファースト・ブランズが先月、米連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)の適用を申請した時点で、カツミが保有する未回収債権は約21万件、その総額は17億5000万ドルに上ったという。
裁判資料によれば、ケリー氏は1日の審問でクリストファー・ロペス判事に対し、カツミのアドバイザーは「限られた情報で対応している」と述べた上で、同社はファースト・ブランズから買い取った債権を自社の取得資産と位置づけていると説明した。さらに、破産法第11章の手続きについて「迅速に進むことを望んでいる」との考えを示した。
同社のウェブサイトによると、テキサス州を拠点とするカツミの主な事業は資産担保融資やトレードファイナンス。
JAMLと農林中金は、個別の取引内容についてのコメントを控えた。農林中金はブルームバーグ・ニュースに対し、JAMLと適切な対応策について協議を進めていると説明した。
三井物産の広報担当者は、エクスポージャーの額については認識していないと述べた。カツミの担当者にもコメントを要請したが、すぐに返答は得られなかった。
ファースト・ブランズは9月28日に連邦破産法11条の適用を申請した。裁判所の文書に記載された同社の負債額は推定100億-500億ドル。これまでに開示された債権の中では、カツミ・グローバルの額が最大となっている。これに次ぐのは、ジェフリーズ・ファイナンシャル・グループ傘下の資産運用会社で、ファースト・ブランズの顧客企業によって支払われるべき売掛債権に約7億1500万ドルを投資していた。
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原題:First Brands Exposure of $1.75 Billion Hits Norinchukin Venture(抜粋)
▽ファーストブランズ破綻、無数の警告サイン-欲に負けた銀行見過ごす<bloomberg日本語版>2025年10月10日 4:52 JST
Eliza Ronalds-Hannon、Irene Garcia Perez、Davide Scigliuzzo、Reshmi Basu、Anders Melin
- ファーストブランズ、大手金融機関に合計100億ドル超の債務抱え破綻
- 実態は謎、過去には訴訟も-それでも高金利に釣られ大手銀が投資

後から振り返ってみれば、明らかな問題の兆しはいくらでもあった。ズームでの会議で、オーナーは常にカメラのスイッチを切っていた。このオーナーの弟は、貸し付けの裏付けとして請求書を求める投資家に逆ギレしていた。サプライヤーへの支払いはたびたび遅れていた。簿外での大規模な資金調達がささやかれていた、などだ。
にもかかわらず、9月末に劇的に破綻するまで、ファースト・ブランズ社外ではその全容を把握していた者はほとんどいなかった。これはプライベートファイナンスという不透明な世界に流れ込むマネーにとって、大きなリスクが潜んでいることを如実に示す一例となった。
ファースト・ブランズがどのように運営され、どこから資金を調達し、誰が経営していたのかすら、多くが謎に包まれていた。
全てが崩壊した時点で、ファースト・ブランズが抱えていた巨大な自動車部品工場と流通センターのネットワークは、ジェフリーズやUBS、ミレニアムなどウォール街の有力金融企業数社に100億ドル(約1兆5300億円)を超える負債を抱えていた。
ファースト・ブランズが破産を申請してから11日が経った今も、損失の全貌や破綻の正確な原因は明らかになっていない。だが8日夜、ファースト・ブランズに関連する23億ドルの資金が「消えた」として、同社の金融パートナーの一社であるレイストーンが独立した調査の実施を求める緊急の裁判所申し立てを行ったことで、事態は一段と緊迫した。
ファースト・ブランズの破綻の影響はまた、金融業界全体、さらには業界を超えて広がりつつある。
ファースト・ブランズの短期資金調達を支援し、収入の8割を同社関連であげていたレイストーンは、従業員を既に約半分に削減した。スイスのUBSグループ傘下のヘッジファンド、オコナーは米キャンターフィッツジェラルドが買収することになっていたが、ファースト・ブランズで大打撃を被ったためキャンターは買収条件を再交渉しようとしている。
ジェフリーズ・ファイナンシャル・グループは傘下の資産運用会社、ポイント・ボニータ・キャピタルに資金を投じていた投資家からの返金請求に直面している。ポイント・ボニータはトレードファイナンスのポートフォリオのうち約4分の1に相当する約7億1500万ドルをファースト・ブランズ関連に投資していた。
ジェフリーズは10年にわたってファースト・ブランズの長期融資の販売を支援しており、評判に傷が付く恐れも生じている。
これらの企業も非難のそしりを免れないと、業界関係者は指摘する。 レイストーンのようなプラットフォーム企業は、リスクの高い企業にあまりにも簡単に短期資金へのアクセスを与えていたとして厳しい目を向けられており、資産運用会社も、そうしたプラットフォームを経由して資金を投じておきながら、ほとんど監視を行ってこなかったとして批判されている。
破産専門弁護士で、ニューヨーク大学スターン経営大学院で教えるジョセフ・サラチェク氏は「こうした資産に対する需要があまりにも高いため、投資の前に本来行うべきデューデリジェンスが軽視されるようになった、だが、非上場企業を相手にするなら、なおさらデューデリジェンスは重要だ」と論じた。

この記事は、詳細の多くは部外秘の情報であるとして匿名を要請した十数人の投資家、取引業者、元従業員へのインタビューに基づいている。ファースト・ブランズとレイストーンは、コメント要請に応じなかった。ジェフリーズ、UBS、ミレニアム、キャンターもコメントを控えた。
破産手続きの初回審理でファースト・ブランズの一部の取締役、役員、オーナーを代理していると述べた弁護士のエリカ・ワイスガーバー氏は、破綻の主な原因を「経営陣にはどうにもできないマクロ経済的な要因やその他の逆風」と説明。同社や経営陣に対する疑惑は否定し、それらについては適切な時期に対処すると述べた。
ブラックボックス
詳細が次々と明らかになる中で、不透明な金融取引の網の目に自ら関与していたことを投資家たちは認めざるを得なくなっている。ファースト・ブランズの実際の債務がこれまで開示されていた規模を大きく上回っていたことが判明するやいなや、その不透明なネットワークは突然崩壊した。
「ブラックボックス」-。不透明なファースト・ブランズを債権者はそう呼んでいた。同社の事例は、公開市場からプライベート取引へと資金がシフトする中で非上場企業の世界がいかに重要な存在に成長したかを示すとともに、規制当局や格付け会社、投資家自身にさえもほとんど情報が提供されていない実態を浮き彫りにした。
このようなリスクは、もはやウォール街に限定されたものではない。ファースト・ブランズは、オルタナティブ資産を個人投資家向けにパッケージ化する米フィンテック企業イールドストリートを通じて、数億ドル規模の短期資金を調達していた。
イールドストリートの提供資料を注意深く読み込んだ顧客ですら、自らの投資資金が通称「マンゴー」という「グローバル・コングロマリット」に向かっているという情報しか得られなかった。
イールドストリートは、ファースト・ブランズへの資金提供は既に昨年停止し、顧客は損失を被っていないと説明。「当社が提供する投資機会では通常、カウンターパーティーの秘密が保持される」と電子メールで回答した。
債権者がここ数週間、実像を把握しようと躍起になっているファースト・ブランズのオーナー兼最高経営責任者(CEO)、パトリック・ジェームズ氏は捉えどころがない。わずかな公的な記録によると、同氏はマレーシア・クアラルンプールで育ち、米オハイオ州の大学に留学。学生時代にキャンパス内のバーを買収したが、「マレーシアでディスコサービスを運営し、大企業の年次パーティー向けに照明、音楽、DJを提供していた」と当時の学生新聞は伝えた。
ジェームズ氏の弁護士は、コメントの要請に応じなかった。また、本人のものとされるメールアドレスや電話番号にも当たったが、連絡をとることはできなかった。
大学卒業後、ジェームズ氏はオハイオ州デイトンのM&A企業での勤務を経て、複数の持株会社や子会社を駆使しながら地元の自動車関連会社の買収を始めた。
情報非公開のCEO
だが、2011年にフォートレス・インベストメント・グループの関連会社が複数の企業を提訴。これらの企業はジェームズ氏の支配権と、「従業員と経営陣、住所が同じで、別々の帳簿や記録もなく、甚だしい資本不足」という実態を隠していると主張した。
ジェームズ氏とこれら企業はフォートレスの主張を否定したが、この訴訟および、それより2年前に提起された詐欺容疑の訴訟について、いずれも示談金を支払う形で決着させた。
しかし、これらの訴訟がウォール街にブレーキをかけることはなかった。
当時クラウン・グループと名乗っていた企業は2014年、3億8000万ドルの借り入れでシンジケートローン市場の利用を開始。20年には社名をファースト・ブランズへと変え、買収を加速するために10億ドル超の追加資金を借り入れた。同社の長期債務は最終的に、約60億ドルに膨らんだ。

ただ、過去の訴訟やCEOに関する情報が乏しいことを突き止め、融資の見送りを決めた投資家も一部にはいたと、公に話す権限がないとして匿名を要請した投資家は話した。
公的な記録によれば、ジェームズ氏はクリーブランド郊外の複数の家屋について住宅ローンを組んでおり、地元の教会や学校に寄付を行う財団も設立していた。しかし、その一方で、インターネット上に同氏の関与を示す情報はほとんど残されていない。
企業スキャンダルのネットワークフォレンジック調査を専門とするユニカス・リサーチの創業者、ラクシュミ・ガナパティ氏は、顧客の依頼を受けてファースト・ブランズを調査した。そこで出た結論は、インターネット上の履歴や個人住所をジェームズ氏が隠しているということだった。
「ジェームズ氏は自分自身とその資産を隠すために、厳重な対策を講じていたように見える。これら全てが、投資家にとっては重大な赤信号となるべきだ」とガナパティ氏は警告した。
トレードファイナンス
ファースト・ブランズの不透明な運営実態を一段と増幅させていたのが、短期の資金繰りを融通する手段の急増だった。広義にはトレードファイナンスと呼ばれるもので、将来の出荷予定や在庫を担保に企業版の給料日前ローンを借り入れる仕組みだ。
こうした取引の多くは、ファースト・ブランズのバランスシート上には表れなかった。一部はジェームズ氏が所有する別法人を通じて実行されていたことが一因だ。
トレードファイナンスは長年利用されてきた金融手法だが、2008年の金融危機後にウォール街で急速に注目を集めるようになった。破綻した英新興企業グリーンシル・キャピタルが台頭したのもこの分野で、ウォール街の大銀行と手持ち資金の乏しい製造業企業との間で資金のパイプ役を担った。
グリーンシル初期の従業員の1人が創業したレイストーンを通じて、ファースト・ブランズはこの市場を利用した。
グリーンシルは2021年に破綻し、短期融資のリスクを過小評価し、根底にある債権の実態を明らかにしていなかったとして、激しい非難を浴びた。それでも、ファースト・ブランズは多くの投資家にとってあまりに魅力的だった。
ゴールドマン・サックスのアナリストによる見積もりでは、一部の短期資金には30%に達するような高金利が支払われていた。レイストーンとその投資家は、期日にファースト・ブランズが全額を支払うとの約束を取り付けた上で、同社のサプライヤーが抱える未回収の請求書を割引価格で買い取り、その差額を利益としていたとみられる。
ジェフリーズは今週、傘下のポイント・ボニータがファースト・ブランズのトレードファイナンスに数億ドルをつぎ込んでいたと発表した。オコナーなどUBS傘下の複数のファンドは、5億ドル以上のエクポージャーを保有している。
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原題:First Brands Blindsides Wall Street in ‘Black Box’ Loan Fiasco(抜粋)