- 国債利回りは上昇、WTI先物は4%超上げて1バレル=102ドル台で終了
- コアCPIは前年比2.8%で予想上回る、27年にFRB利上げの見方が強まる

12日の米金融市場では、S&P500種株価指数が反落。高騰していた半導体関連株の下落が相場を押し下げた。朝方発表された米消費者物価指数(CPI)統計で、イラン戦争に伴うエネルギー価格高騰の影響が鮮明となったことも材料視された。
米ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)原油は4%超上げて1バレル=102ドル台で取引を終了。インフレ懸念再燃で米国債利回りは全年限で上昇(価格は下落)。ドルは上昇した。
| 株式 | 終値 | 前営業日比 | 変化率 |
|---|---|---|---|
| S&P500種株価指数 | 7400.96 | -11.88 | -0.16% |
| ダウ工業株30種平均 | 49760.56 | 56.09 | 0.11% |
| ナスダック総合指数 | 26088.20 | -185.93 | -0.71% |
S&P500種は、前日に更新した過去最高値から下落した。コアCPIがエコノミスト予想を上回る伸びとなり、株式相場の上昇は止まった。フィラデルフィア半導体株指数は、約3%下落した。
イランでの戦争を受けた安値圏からの株式相場の急反発には、過熱の兆しが見え始めていた。とりわけ相場上昇をけん引してきたハイテク企業群で、その傾向が強まっていた。3月末以降の半導体株の急騰を受け、市場では上昇の一服を見込む見方が広がっていた。戦争が景気を減速させ、インフレを加速させる恐れがあるためだ。
eToro(イートロ)のブレット・ケンウェル氏は、「これほど力強い決算主導の上昇の後では、株式は単に小休止が必要となる可能性がある」と述べた。「労働市場や経済全体は依然として安定しているように見えるが、強固とまでは言えない。米連邦準備制度理事会(FRB)内の見解の不一致やインフレの上昇も状況を複雑にしている」と語った。
米国のインフレ率は4月、ガソリンや食料品価格の上昇を受けて加速し、賃金の伸びを上回った。すでに圧迫されている消費者にとっては二重の打撃となった。CPIは前年同月比で3.8%上昇し、2023年以来の大幅な伸びとなった。食品とエネルギーを除くコア指数は2.8%上昇した。
リーガン・キャピタルのスカイラー・ウィナンド氏は、「インフレは再び勢いを増しており、その主因は高止まりする原油価格だ。中東での紛争が続く中、年内のインフレ動向は原油価格に左右されるだろう」と述べた。

モルガン・スタンレー・ウェルス・マネジメントのエレン・ゼントナー氏は、「コアCPIの上昇は、高いエネルギー価格の影響が経済全体に広がっていることを示している」と述べた。そのうえで、「FRBが利上げに転じることを意味するわけではないが、新たなFRB指導部の下でも直ちにハト派へ転換するわけではないという現実を裏付けている」と加えた。
米国債
米国債相場は全ての年限で下落(利回りは上昇)。原油価格の上昇でインフレが高止まりし、FRBに来年の利上げを促す可能性があるとの見方が広がった。
米30年債利回りは5.02%に達し、今年の高水準まで2ベーシスポイント(bp)に迫った。一方、2年債利回りは約4%で推移した。
| 国債 | 直近値 | 前営業日比(bp) | 変化率 |
|---|---|---|---|
| 米30年債利回り | 5.02% | 3.9 | 0.78% |
| 米10年債利回り | 4.46% | 4.8 | 1.08% |
| 米2年債利回り | 3.99% | 3.6 | 0.90% |
| 米東部時間 | 16時58分 |
フォート・ワシントン・インベストメント・アドバイザーズのシニア・ポートフォリオマネジャー、ダン・カーター氏は、「エネルギー価格の高止まりが長引くほど、コアインフレへの波及リスクは高まる」と述べた。その上で「こうした要因を踏まえると金利は高止まりする可能性が高く、解消には時間を要するだろう。30年物利回りが5%を持続的に上回る条件は整っている」と語った。

2月下旬の米国によるイラン攻撃前には、原油価格は約30%低かった。ガソリン価格は1ガロン=3ドルを下回っていたが、今月には4.5ドルを突破した。
米短期金利先物市場では、2027年の米利上げ確率が上昇し、80%を超えた。戦争前は、FRBが今年0.25ポイントの利下げを2回実施することを完全に織り込んでいた。
米国債利回りは、420億ドル規模の10年債入札後もこの日の高水準圏で推移した。落札利回りは4.468%と、2025年2月以来の高水準となった。入札前取引(WI)水準の4.464%をわずかに上回り、需要が予想に届かなかったことを示唆した。
外為
外国為替市場でドル指数は続伸。4月のCPI発表後も、ドルは上昇を維持した。
円は対ドルで続落。東京時間には157円台後半から156円台後半まで1円近く急伸する場面があったが、ニューヨーク時間に入ると総じて157円台半ばから後半で推移した。
| 為替 | 直近値 | 前営業日比 | 変化率 |
|---|---|---|---|
| ブルームバーグ・ドル指数 | 1192.64 | 3.36 | 0.28% |
| ドル/円 | ¥157.66 | ¥0.47 | 0.30% |
| ユーロ/ドル | $1.1739 | -$0.0044 | -0.37% |
| 米東部時間 | 16時58分 |
片山さつき財務相は、為替政策を巡りベッセント米財務長官と緊密に連携していると確認した。
またベッセント氏は、日本の為替介入に関する質問に対して、「過度な変動は望ましくないとの認識で一致している」とし、日米当局は「緊密に連絡を取り続けており、今後もそうしていく」と語った。
JPモルガン・チェースのストラテジスト、斉藤郁恵氏は「日銀国債利回りが比較的安定しており、現時点で米国債市場への顕著な波及も見られないことから、協調的なレートチェックのハードルは依然として高い」と述べた。

一方、ポンドは対ドルで下落した。先週の地方選での大敗を受け、英国の与党・労働党内でスターマー首相に対する退陣要求が広がっていることが背景にある。
原油
ニューヨーク原油先物は大幅続伸。トランプ米大統領が最新停戦案に対するイランの回答を拒絶したことから、ホルムズ海峡の閉鎖長期化が懸念されている。
トランプ氏はイランが降伏するのは「単に時間の問題だ」と述べた。前日には停戦合意が「大きな生命維持装置につながれている」として、危機的な状況にあるとの認識を示した。
4月上旬に始まった停戦は、船舶への攻撃を含め散発的に緊張が高まった後も維持されている。ホルムズ海峡の実質封鎖は世界の原油、天然ガス、石油製品の流通を著しく混乱させ、インフレ懸念を再燃させている。

Trump Says Iran Ceasefire Is on ‘Life Support’0:40動画:ホワイトハウスの大統領執務室で記者団に話すトランプ米大統領
事情に詳しい関係者によると、イランは先週の米和平案に対し、ホルムズ海峡の通航に一定の影響力を維持する一方で、米国による海上封鎖の解除と制裁緩和を要求した。機密性の高い情報であるとして、関係者は匿名を条件に語った。
A/Sグローバル・リスク・マネジメントのチーフアナリスト、アルネ・ローマン・ラスムセン氏は「今回の交渉決裂で、ホルムズ海峡の閉鎖が長期化するリスクが高まった。供給不足の緩和に寄与してきた一時的要因が消えれば、現物市場は再び逼迫(ひっぱく)するだろう」と述べた。
イランの主要輸出ターミナルからの原油出荷は、ここ数日ほぼ停止している状況が衛星画像からうかがえる。今回の戦争開始後では最も長い停滞の兆候だ。原油輸出はイランにとって極めて重要な収入源であり、世界のエネルギー供給において依然重要な役割を担っている。
世界的な供給余力の縮小は、エネルギーコストの上昇につながっている。米国では戦争開始後にガソリン価格が跳ね上がり、中間選挙を控えたトランプ氏と共和党に政治的圧力が強まっている。米国は先週、過去最高ペースで戦略石油備蓄(SPR)を放出した。
戦争終結の兆しが見えないものの、製油業者は購入を抑制しており、市場の強さを示す指標はここ数日で低下している。ブレント原油における直近2限月の価格差であるプロンプトスプレッドは、4ドル近いバックワーデーションとなっている。4月上旬は10ドルに近かった。
関連記事:原油の現物価格が軟化、プレミアム縮小-ホルムズ再開後の暴落を警戒
米エネルギー情報局(EIA)は2027年の米原油生産が日量1410万バレルに急増するとの予想を明らかにした。一部の国内掘削業者は価格高を好機ととらえ、掘削活動を強化している。EIAの予想では、今年の世界需要はわずか日量20万バレルの伸びにとどまる見通し。従来予想は120万バレルだった。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のウエスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物6月限は、前日比4.11ドル(4.2%)高い1バレル=102.18ドルで終了。北海ブレント先物7月限は同3.56ドル(3.4%)上昇して107.77ドルで終えた。
金
金スポット価格は反落。最新の米物価統計ではエネルギーと食品価格が上昇し、インフレの加速が明らかになった。年内利下げの見通しが後退した。
インフレ懸念の再燃で国債利回りが上昇し、市場では年内利上げの見通しが高まった。金利の上昇は通常、利息を生まない金投資にはマイナスに作用する。

今年の金相場は1月下旬に過去最高値を更新した後は、乱高下を繰り返しながら伸び悩んできた。中東で紛争が起きてからは、原油高によるインフレを抑制する必要から、利下げ見送りもしくは利上げが促されるとの懸念が広がり、金相場は苦しい展開が続いている。
オーバーシー・チャイニーズ銀行(OCBC)のストラテジスト、クリストファー・ウォン氏は金の値動きについて「単に安全な逃避先というよりも、石油とインフレ、FRB政策の織り込み、ドル相場の動向、そしてリスクセンチメントの間で揺れるマクロリスクの代理指標として取引されている」と解説した。
金スポット価格はニューヨーク時間午後1時46分現在、前日比57.32ドル(1.2%)安い1オンス=4678.85ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物6月限は42ドル(0.9%)安い4686.70ドルで取引を終えた。
欧州
12日の欧州債券市場は、英スターマー政権の先行き不透明感から英国債が売られた。原油価格の上昇を受け、欧州の他の債券も下落した。
英30年債利回りは、一時14ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇し5.81%と1998年以来の水準に達した。その後は上げ幅を縮小し、5.76%で取引を終えた。長期債は短期債よりも大きく売られ、利回り曲線はベア・スティープ化した。
スターマー首相は、与党・労働党の新党首への移行について、早ければ12日にも発表せざるを得なくなるとみられているが、今のところ首相を続投する意向を示している。英国の政権がより左寄りに交代した場合、有権者の支持回復のため、財政支出の拡大につながる可能性があり、英国債利回りに上昇圧力がかかる見通しだ。
ドイツ2年債利回りは6bp上昇し2.70%となった。イランでの停戦継続に対する不安が原油価格を押し上げ、インフレリスクを高めている。
欧州株は下落した。4月の米国の消費者物価指数(CPI)が予想を上回り、中央銀行への利上げ圧力が改めて意識されたことで、株式市場の見通しが不透明となった。
ストックス欧州600指数は1.0%下落し取引を終えた。リスク回避の動きが広がる中、テック株と小売株が下落をけん引した。同指数の20のセクターのうち、上昇したのは3セクターにとどまった。投資家がディフェンシブ銘柄を選好したことで、食品・飲料やヘルスケアなどが上昇した。
政局不安の下、英国株も軟調で、内需関連銘柄の比重が高いFTSE250指数は1.5%下落した。銀行株が売りの中心となり、ロイズ・バンキング・グループ、ナットウエスト・グループ、バークレイズが下落した。アナリストは、政治的圧力に対応して労働党がより左寄りの政策を取った場合、銀行はさらに重い税負担に直面する可能性があるとみている。
5月12日の欧州マーケット概観(表はロンドン午後6時現在)
| 株 | 終値 | 前営業日比 | 変化率 |
|---|---|---|---|
| ストックス欧州株600 | 606.63 | -6.16 | -1.01% |
| 英FT100 | 10,265.32 | -4.11 | -0.04% |
| 独DAX | 23,954.93 | -395.35 | -1.62% |
| 仏CAC40 | 7,979.92 | -76.46 | -0.95% |
| 債券 | 直近利回り | 前営業日比 |
|---|---|---|
| 独国債2年物 | 2.71% | +0.07 |
| 独国債10年物 | 3.10% | +0.06 |
| 英国債10年物 | 5.10% | +0.10 |
原題: Chip Stocks Sink as Inflation Woes Boost US Yields: Markets Wrap(抜粋)
Treasuries Fall as Rising Oil Prices Herald Sticky Inflation (3)
Pound Lags on Starmer Risk; Dollar Climbs Post CPI: Inside G-10
Oil Extends Gain as US-Iran Ceasefire Remains Elusive
Gold Slides Lower as US Inflation Clouds Fed Easing Outlook
UK Debt Plunges on Deepening Political Crisis: End-of-Day Curves
European Stocks Slip as Vodafone Plunges, Banks Weigh