今朝のニュースに接し、成長投資の足を引っ張る根強い緊縮論があることを痛感した。
読売新聞(14日付)によると、城内実経済再生・成長戦略担当相は14日、自民党日本成長戦略本部の会合で以下の趣旨の発言を行った。高市内閣が重点を置くAI(人工知能)など「戦略17分野」に対し、党内から分野の絞り込みを求める声があることを指摘した上で、「『絞る』や『削る』といった緊縮発想があるからこそ、経済が成長しないのだ」と強く反論した。
7月上旬の策定を目指す「骨太の方針」に成長戦略が盛り込まれる予定だが、同紙は城内氏の発言を「積極投資の重要性を改めて訴えたものだ」と解説している。記事の中で城内氏は「あれもこれもではなく、『勝ち筋』で打って出ようと言っている」と17分野の妥当性を強調しつつ、「成果が見込めないと判断すれば柔軟に見直す」との現実的な考えも示している。
成長投資の必要性はいまさら言うまでもないが、緊縮を唱える前に、体系的かつ戦略的な投資論が必要だろう。高市首相は13日、その一端を明らかにしている。
読売新聞(Web版、14日付)によると、高市首相は「新技術立国」の実現に向け、大学や国立研究機関などの研究費について「実質的に倍増」させる目標を掲げ、高度な研究力を持つ大学を支援する新たな認定制度の創設を目指す方針を示した。
首相は13日午後、首相官邸で経団連幹部と会談。経団連側からは、2040年度までに官民の研究開発投資額を23年度の倍以上となる50兆円へ引き上げることを柱とした提言書が手渡された。そこには、基礎研究を支える「科学研究費助成事業(科研費)」の早期倍増も盛り込まれている。
これに対し首相は「基礎研究力は国力に直結する」と応じ、大胆な予算措置を検討する考えを伝えた。その上で、研究機器などの基盤整備を含め「研究費が実質的に倍増する形を目指す」と明言している。科研費は近年、2500億円前後で推移しているが、政府は27年度予算に向けて大幅増額の調整に入る。
こうした動きが緊縮派を刺激したのかもしれない。だが、直接的な利益に直結しにくい基礎研究こそが、将来の企業収益、ひいては国富の土台であることは明白だ。
英国のイノベーション研究の権威、マリアナ・マッツカート氏の著書『起業家としての国家』には次の一節がある。
「アップル社はデジタル革命の旗手として称賛され、iPod、iPhone、iPadの成功は世界の競争環境を一変させた。(略)しかし、あまり知られていないのは、同社の革新を裏打ちするコア技術の多くが、何十年にもわたるアメリカ政府の支援によって実現したという事実である。ジョブズと彼のチームの天才的資質は疑いようがないが、それらの製品に搭載された最先端技術のほとんどは、政府や軍の長年にわたる研究支援と財政援助の賜物なのだ」
アップルの成功はスティーブ・ジョブズ個人の功績のみに帰するものではない。米国政府が長年築き上げてきた基礎研究の蓄積があってこそ、その花が開いたのである。
リスクを伴う基礎研究は政府が担う、というのが投資戦略の本筋だ。日本の「失われた30年」の要因の一つは、政府が本来果たすべき基礎研究への投資を軽視したことにある。
高市政権が推進する17分野への重点投資や基礎研究の拡大は、投資理論として極めて一貫性がある。あわせて打ち出されている「高専」をはじめとする理系人材の拡充・強化も、その一環だろう。
ここに再び緊縮論が入り込めば、高市内閣の成長投資戦略は空中分解しかねない。城内担当相の発言から察するに、積極財政をめぐる議論はいよいよ「胸突き八丁」の正念場を迎えている。