先週末に明らかになったトランプ大統領の発言に衝撃を受けた。世界を主導する大統領としての自覚も決意も感じられない。それどころか、自分勝手な言動で世界を翻弄する大統領であることを、改めて世界中に印象付けた。この大統領を誰が止めるのか。結局、それは米国の有権者だ。

中間選挙が近づいていることが、トランプ氏の発言に拍車をかけたのだろう。先週金曜日(9日)、同大統領は突然、戦争犯罪の疑いで国際刑事裁判所(ICC)から逮捕状が出されているプーチン大統領と電話会談を行った。そして、ロシアが「米国と世界市場にディーゼル(軽油)を供給することで合意した」(ロイター)と発表したのだ。

これに対してゼレンスキー大統領は、ウクライナ代表団が戦争終結の方策を協議するため訪米している最中に発表された今回の合意を、「強い立場にあるパートナーが下した弱腰な決定」(同)と批判した。この発言が気に入らなかったのだろう。

翌日(10日)、トランプ氏は「ウクライナは新しい大統領を選ぶ時だと思う」(同)と言い返した。大国の大統領とは思えない、子供のけんかのような口撃である。政治家としての資質を疑わざるを得ない。頭の中を不快な言葉が駆け巡った。

まだある。11日には「ウクライナとロシアがエネルギー施設への攻撃停止で合意した」(同)とSNSに投稿。これに対してゼレンスキー大統領は「初耳だ」(同)と指摘した。もはや何をかいわんや、である。

おまけまである。今年もノーベル平和賞を受賞できなかったことを根に持ったのか、トランプ大統領は9日、次のようにコメントした。

「これはノルウェーという国と、こうした不名誉で恥ずべき決定を下した人々にとって、消すことのできない汚点だ」(同)。

ノルウェーのノーベル賞委員会は正しい決定をしたのだ。恥ずかしいのはドナルド・トランプ大統領の方である。後世にまで、その見識を問われかねない発言をノーベル平和賞の歴史に刻み付けた。題して「恥をさらした米国の大統領」である。

ちなみに、今年のノーベル平和賞受賞者は、国際刑事裁判所(ICC)の元判事、ナヴァネセム・ピレイ氏(85)だ。ノーベル委員会は「平和と国際法の促進」への貢献を授賞理由に挙げた。国際紛争を解決したと自慢するトランプ氏自身は、今回の決定を到底受け入れられないのだろう。しかも、トランプ政権はICCを経済制裁の対象としている。

「TACO」(Trump Always Chickens Out=トランプ氏はいつも尻込みする)という俗称を持ち出すまでもないが、それにしてもトランプ氏の最近の言動は異常である。

中間選挙を目前に控え、支持率の回復を図りたい気持ちは分からないでもない。だが、これでは支持率の回復など望めないだろう。それどころか、さらなる支持離れを招きかねない。

大統領のこうした言動に、西側同盟国はどう対応するのだろうか。

頼みのドイツでは、シュレーダー元首相がプーチン大統領の誕生日を祝う会に出席し、国内から「非常識」と猛烈な批判を浴びている。メルツ首相も支持率の低迷にあえぎ、右派政党「ドイツのための選択肢」(AfD)の猛追にさらされている。

フランスのマクロン大統領も高校生によるデモの拡大で、トランプ氏に意見するどころではない。中東情勢も一向に好転しない。

トランプ氏を止められるのは誰か。

結局、米国の有権者に望みを託すしかない。