毎朝ネットでニュースを見ている。ネット上には膨大な量の情報が流れている。これを選り分けるために見出しでニュースの価値を判断する。その際のキーワードは「突然の」とか、「世界で初めて」とか、「サプライズ」といった形容詞である。きょう目を引いてついついアクセスしてしまったのが「ビットコインが突然の急騰」という見出し。ブルーンバーグ(BB)は「ビットコインが突然の急騰、理由特定に市場は苦悩」、ロイターは「ビットコイン一時20%超高、『仮想通貨の冬』終わるとの指摘」とある。ビットコインの急騰には唐突感がある。最近はほとんどニュースになることはなかった。「何があったのだろう」、見出しに惹かれて記事をクリックする。

ロイターによると「仮想通貨のビットコインBTC=BTSPが一時23%高の5080ドルと、4カ月半ぶりの高値を付けた。取引時間中の上げでは2017年12月以来の大きさ」とある。となれば次は急騰の理由が知りたい。「アナリストらによると、匿名の買い手が1億ドル規模の大型注文を出し、他の仮想通貨にも影響が広がったという」(ロイター)とある。「匿名の買い手」とは」誰。誰もが知りたい。だが、メディアはいつものことながら最も知りたいことには答えてくれない。次にBB。「トレーダーらはこの急騰の理由を特定するのに苦労している」とある。こちらの方が記事の書き方としては正直な気がする。要するに急騰した理由はわからないのだ。「ビットコインは昨年74%下落した後、今年に入ってはいつになく静かな値動きだった」と最近の動きの解説にとどめている。

となれば想像するしかない。最初に思い浮かんだのは北朝鮮。外貨獲得に死に物狂いの同国が、世界中から略取したビットコインの換金売りを目指して相場を釣り上げた。ありそうな気がするが、単なる空想物語。次は投資家の動き。3〜4カ月全く動きがなかった相場。これ以上は下がらないと踏んだ大金持ちの個人投資家が、試しに買いを入れてみた。すると相場は予想外に値上がりした。あるいは機関投資家かビットコインに関連する企業。相場の転換を目指して買いを入れた。我ながら貧弱な想像力だと思う。相場の格言に「まだはもうなり、もうはまだなり」というのがある。思ったようには動かないことのたとえだ。不透明感に覆われた相場環境の中で、ひょっとすると何かが動き始めようとしているのかもしれない。