中国の新疆ウイグル自治区で、およそ200人が死亡した大規模な暴動から5日で10年になります。中心都市のウルムチでは厳重な警戒態勢が敷かれる一方、国際社会からはテロ対策を名目に大勢のウイグル族が不当に拘束されているとして批判の声も上がっています。

中国の新疆ウイグル自治区では、2009年7月5日、中心都市のウルムチで少数民族のウイグル族による中国政府への抗議デモが大規模な暴動につながり、政府側の発表で、およそ200人が死亡しました。

暴動から10年を迎える中、ウルムチの中心部では至るところに交番が設けられ多数の警察官が配置されていて厳重な警戒態勢が敷かれています。イスラム教を信仰するウイグル族の間では、中国政府による抑圧的な宗教政策や漢族との経済格差などに根強い不満があります。

中国政府は、新疆ウイグル自治区の経済発展を後押しして地域の安定を図る一方、「テロとの戦い」を掲げて治安対策に力を入れており、この3年間はテロ事件などが起きていないと成果を強調しています。

しかし、アメリカや国際的な人権団体からは、大勢のウイグル族がテロ対策を名目に不当に当局の施設に拘束され思想教育を強制されているとして懸念や批判の声が上がっています。

口を閉ざすウイグル族

新疆ウイグル自治区では、中国政府に批判的な人について当局に密告することを奨励する通知が出ています。ウイグル族の多くは取材に対し、10年前の暴動について「話したくない」などと、ほとんど語ろうとしませんでした。

また、ウイグル族と同じようにイスラム教を信仰する回族のタクシードライバーの男性は、10年前のことを質問すると「暴動を見たには見たが過去のことなので忘れた」と話しました。また、海外の人と接触するウイグル族などが当局の施設に拘束されていると言われる中、この男性は「海外からの電話を受けることはできない」と話していました。

一方、漢族の49歳の男性は「以前は暴力的な事件があったが今はなくなった。思想上の悪い兆しがある人はすべて当局の施設で学び直すことになっていて、安全こそが第一だ」と話し、当局の治安対策を評価していました。