この週末はスポーツで盛り上がった。伊調馨の五輪五連覇の夢は遠のいたが、米国のプロバスケットチームから1巡指名されたワシントン・ウィザーズの八村塁はサマーリーグでプロデビュー。ジャンクシュートを決めるなど初めての公式戦で大活躍した。そんな中でこの週末一番印象に残ったのはプロゴルフの石川遼選手、念願の日本プロゴルフ選手権を初めて制覇した。韓国の黄重坤(ハン・ジュンゴン)選手とのプレーオフは劇的な幕切れだった。1ホール目、パー5の18番ロングホール。ともに2オンした二人だが、黄は残り30メートル以上残す。一方の石川は残り5メートル弱。第2打がスーパーショットだった。ともにイーグルパット。黄がわずかにカップを外したのに対し、石川は軽いスライスラインを読み切ってイーグル。その瞬間、石川はパターを投げ出し、両手を天に突き上げて喜びを表現した。長かったスランプを脱出した瞬間だった。

石川のツアー優勝は、2016年8月のKBCオーガスタ以来、3年ぶり。通算15勝目。10代後半で日本のトッププロになり、松山英樹とともに日本を代表する選手になった。二人は米国に渡って世界のトップを目指す。松山は米国ですでに5勝をあげているが、人気と知名度で松山を上回っていた石川は予選敗退が相次いだ。それ以上にスイングが根本から壊れてしまったような極度のスランプに陥った。ここ数年は国内のトーナメントでもいい成績を残せず、復活に向けもがき苦しむ日々を送っていた。今年の4月、本人の開幕戦となった中日クラウンズでは、腰痛のため第1ラウンドで11オーバーの81を叩いて棄権した。かつての名声は地に落ち、大半のゴルフファンは石川の復活を絶望視した。石川の凋落に歩調を合わせるように、日本の男子プロの人気も低迷し、活況を呈する女子プロを横目にトーナメントの数も減っていた。

今年の日本プロゴルフ選手権は熊本県の指宿ゴルフクラブで行われた。折から九州地方を襲った悪天候の影響で木曜日の予選が中止になり金曜日、土曜日に予選、日曜日に36ホールの決勝ラウンドを行うという異例の展開。予選をトップで通過した石川は、決勝の最初のラウンドで一時トップに7打差をつけられる乱調ぶり。また、いつもの石川かと思いきや、上がり3ホールで3連続バーディー。最終ラウンドをトップと4打差でスタートした。最終ラウンドは我慢のゴルフ。スイングの乱れもなくOBもなし。テレビ画面を通して石川の物凄い集中力が伝わってくる。優勝インタビューで、「7打差をつけられた時は一瞬切れそうになった」と振り返ったが、「挑戦者だと自分に言い聞かせて切り替えた」という。涙を浮かべながらファンや周囲に感謝する石川の表情が印象的だった。復活した石川はまだ27歳。この先が楽しみだ。