NYダウが760ドル強急落し、人民元が1ドル=7元を割り込んだ。そして北朝鮮がまたまた未確認飛翔物体を発射し、トランプ大統領が中国を「為替操作国」に指定した。中国は中国で民間企業による米国からの農産物の輸入を停止し、8月3日成約分の米農産物に関税を課す方針を示している。韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領はきのう、秘書官や補佐官を集めた会議で改めて日本批判を展開している。スイスの金融当局はスイスフラン防衛のために為替市場に介入している模様だが、日本は静観の構え。香港のデモは衰える気配を見せず、時事ドットコムによると、北京のイスラム教徒向け飲食店の看板からアラビア文字が排除されているという。中国当局はウイグル族弾圧を一段と強めているようだ。

夏休み気分を吹っ飛ばすような、凄まじい不協和音の連続である。「来るべきものが来た」ということだろう。中国当局の危険を顧みない為替介入やアラビヤ文字の排除は予想できなかったが、NYダウの暴落はさもありなんという気がする。トランプ米大統領と習主席はそれぞれが「弱み」を抱えながら強く見せようと「虚勢」を貼っている。その行き着く先が国際経済の混乱であり、人権侵害であり、北朝鮮に代表される軍事挑発だ。トランプ大統領も習主席もグローバル化の急激な進展に伴って生じた歪みを是正しようとしているのだと思う。お互いの主張に一分の理がないわけではない。だが、現実的には世界の政治や経済を混乱させているだけだ。とりわけトランプ氏の「米国第一主義」は、既成勢力が築き上げた国際秩序の矛盾に楔を打ち込んだものの、多国間の協調路線にひびが入るという新たな矛盾を生み出している。

あまりにも乱暴な手法だ。これが世界の潮流をかき乱している。グローバル社会の矛盾を味方につけて、拡大路線をひた走ってきた習主席率いる中国も矛盾だらけだ。権力的に全ての問題は解決できると思っているとしたら大間違いだ。強い中国をつくり、米国との対等に渡り合う大国関係の構築。一帯一路や「中国製造2025」など、まるで地球支配者のような標語をいくら並べて見ても世界は納得しないだろう。ウイグル族の弾圧はエスカレートし、香港市民の普通の生活に国家権力を使って介入し、平穏な市民生活をぶち壊そうとしている。香港の次は台湾だろう。南シナ海の不法占有にはじまり、習氏の拡大路線を誰が止めるのだろうか。一分の理があったはずのトランプ政権も、来年に控えた大統領選挙を前に暴走を繰り返している。こうした動きを見ながら誰もが思う。「来るべきものが来た」と。