NTTがNTTドコモを完全子会社化するという。日経新聞の特ダネだ。買収規模は4兆円にのぼる。菅政権が携帯料金の4割値下げを打ち出している。NTTはドコモの株式の66.2%を保有している。そのNTTを国が34.69%(3月末時点、ブルームバーグ調べ)保有している。昨日、ドコモの米国預託証券(ADR)は一時前週末比29%高となった。菅政権のスマホ料金の引き下げ宣言で値下がりしていたドコモ株は、今日、国内でも大幅に値上がりするだろう。結果的に国も含み益が膨らむことになる。だが、これで国際的な競争力が高まるかどうかは現時点では不明だ。ドコモ、ソフトバンク、格安通信各社などはいまでもNTTの光回線を利用している。ドコモの完全子会社化で通信業界におけるNTTの支配力が強まった時、ここにぶら下がっているキャリアーになにが起こるのか、先行きは判然としない。

日経新聞によると完全子会社化の狙いは、「グループ一体で次世代通信規格『5G』やIoTへ投資し、世界での成長につなげる。菅義偉首相が掲げる携帯電話料金の値下げも見据え、経営を効率化する」ことだという。企業としては当然のことだろう。日本の携帯料金は世界に比べて高いと指摘されている。どんな山奥に行っても携帯が繋がるようになった。通信回線の質や速度を保つための投資は、回線料に跳ね返る。それを無視して端末の料金を引き下げようとすれば、収益子会社を傘下に収めざるを得なくなる。割高な携帯料金にこの設備料金が含まれている。ほぼ通信回線を独占しているNTTとしても将来を見据えれば収益子会社の取り込みに動かざるを得なかったということだろう。通信回線はこれから先も膨大な投資が必要になる。そこを民間だけで負担できるのか。世の中はすでに6Gに向けて動き出している。

時代の激流に巻き込まれているのはNTTだけではない。半導体メモリー大手のキオクシアホールディングス(旧東芝メモリホールディングス)が、10月6日に予定していた東京証券取引所への新規株式公開(IPO)を延期する。米中対立の煽りを受けて、主要な得意先であるファーウェイ向けの輸出ができなくなる。そうなれば上場しても収益が確保できるかどうかわからない。上場延期も当然の決断だろう。キオクシアは米中対立が要因だが、中国に依存している日本の企業はかなりの数にのぼる。中国との関係を維持しようとすれば、米国市場から締め出される可能性だってなきにしもあらずだ。トランプ政権はこの先、米国か中国か、企業に選択をせまる可能性もある。日本の大企業は経営権の根幹に関わる基本政策を政府に委ねているところが多い気がする。ドコモの完全子会社化に動いたNTTの記事を見ながら、日本企業の先行きが心配になった。