週末に総選挙のことを考えた。年内に確実に実施される日本の総選挙のことではない。4期、16年にわたってヨーロッパに、いや世界に影響を及ぼしてきたメルケル首相の後任を選ぶドイツの連邦議会下院選挙だ。9月に実施される。注目は緑の党の共同代表であり、4月に党の首相候補として正式に承認されたベーアボック氏の動向だ。40歳、女性。このところ人気上昇中で、時代を先取りしそうな勢いがあるとメディアは書いている。現時点ではメルケル氏が率いる与党・キリスト教民主同盟(CDU)のほうが優勢のようだ。だが首相候補のアルミン・ラシェット党首の人気が今ひとつ盛り上がらない。時事通信によると現時点では「CDUは依然優勢を保っているが、緑の党が首相を輩出する可能性も出ている」と分析する。世界の潮流はカーボンニュートラル。根拠のない直感に過ぎないが、ベーアボック氏が首相になる可能性は高い気がする。

バイデン氏が米国の大統領に就任して世界の潮流が一気に変わった。グリーン・ニューディールが政治の最前線に躍り出たのだ。日本も昨年9月、安倍長期政権の後を受けて就任した菅首相が2050年までにカーボンニューラルを実現すると宣言、なんとか世界の大勢に乗り遅れずに済んだ。そんな時代の転換期に緑の党の首相候補になったのがベーアボック氏だ。個人的にはドイツの政情も緑の党の実力もよく知らない。過激な行動に走る緑の党というイメージが頭の片隅に残っているが、どうやらそれも過去の話。日経ビジネスによれば「(現在の緑の党は)押しも押されもせぬ中堅政党になっている。16の州のうち、11の州政府で連立政権に参加している。バーデン・ビュルテンベルク州では緑の党の党員がすでに10年間も首相を務めている」とある。知らないうちに緑の党も変わっている。何よりも若い女性を首相候補に抜擢する柔軟性がある。

ベーアボック氏も「急進的な左派勢力ではなく、『実務派』として知られる」(日経ビジネス)ようだ。環境政策を優先する緑の党の代表であることも同氏の人気を高めている気がする。それ以上に「40歳、女性」というプロファイルに国民の期待感があるのではないか。退任して政界を引退するメルケル氏はまだ66歳。バイデン米大統領を持ち出すまでもなく、世界の指導者の中ではまだ若いほうだ。その後任がベーアボック氏になれば、ニュージーランドのアーダーン首相と同年齢だ。首相候補受諾演説でベーアボック氏は「ドイツは大きな潜在力を持っている。その力を解き放つために変革が必要だ。我々が何もしなかったら、未来は良くならない。未来を変えられるかどうかは、私たち自身の手に委ねられている。私は、そのために首相候補として戦う」(日経ビジネス)と訴えた。引きこもりの週末に若きドイツの首相候補に期待を寄せてみた。