【ソウル時事】韓国南部・星州にある在韓米軍の迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」基地に、反対派住民らを強制排除して物資を搬入する動きが加速している。米軍の強い不満を受けた措置で、韓国国防省は地元対策も本格化。一部では中国の反発が予想される「正式配備」の布石ではないかとの観測も出始めた。

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 THAADは2017年に配備されたが、反対運動で生活必需品や施設整備用の資材などの陸路による搬入が進まず、基地内の約400人は劣悪な生活を強いられている。国防省と在韓米軍は昨年後半以降、搬入を本格化。月1回程度だったのが、5月は27日までに5回搬入し、今後は週2回のペースで行う方針だ。

 動きが加速した背景には、3月に訪韓したオースティン米国防長官が基地の劣悪な環境について「受け入れられない」と強い不満を示したことがある。5月21日の米韓首脳会談をはさんで搬入が急増し「露骨な対米アピール」という声も聞かれる。

 17年のTHAAD配備の際は、システムの一部を構成するレーダーで監視されるとして猛反発した中国が、韓国に経済報復措置を取った。そのため、現在も「暫定配備」の位置付けで、「正式配備」の前提になる環境影響評価も進んでいない。

 韓国は中国の習近平国家主席の訪韓を希望しており、専門家は「正式配備すれば中国の猛反発は必至。生活環境を改善するだけだろう」と指摘する。一方で、国防省は24日、地元の星州郡との協議会を初開催。報道によると、地元側から高速道路建設などの要望が出たという。米国は正式配備したいのが本音とみられ、「地元振興策と引き換えに正式配備する可能性がある」(外交筋)という見方も出ている。