【モスクワ時事】ベラルーシ当局が旅客機を強制着陸させ、搭乗していた反体制派メディア創設者を拘束してから30日で1週間。ベラルーシのルカシェンコ大統領は欧米の非難に耳を傾けず、28日にはロシアのプーチン大統領と会談し「対欧米」で結束を確認した。ロシアを後ろ盾に強権支配を強めるルカシェンコ政権がさらに強硬な行動を取ることへの懸念が高まっている。

 23日に起きたベラルーシ当局によるアイルランド旅客機の強制着陸は、欧米から「国家によるハイジャック」と非難を浴びた。しかし、ルカシェンコ氏は26日の議会演説で「国民を守るため、合法的に行動した」と正当化。拘束した反体制派メディア創設者ロマン・プロタセビッチ氏については「殺りくと血みどろの騒乱を起こそうとしていた」と決め付けた。

 ルカシェンコ政権は反体制派拘束のために戦闘機を発進し、旅客機を着陸させるといった「前代未聞」(先進7カ国外相声明)の行動を取った。ベラルーシの政治評論家アルチョム・シュライブマン氏はカーネギー財団モスクワ支部への論考で、昨年8月の大統領選後に拡大した反政権デモで崩壊の危機にさらされたルカシェンコ政権は「生き残りモード」に入っており、「すべてのエネルギーを敵の無力化という1点に集中している」と分析。ロシアの保護下で「反欧米の行動を取ることを恐れていない」と指摘した。

 ロシアとベラルーシの関係は、昨年8月の大統領選までは「経済統合の深化」を迫るロシアにベラルーシが反発し、ぎくしゃくしていた。しかし、ベラルーシの欧米接近を警戒したロシアは弱体化したルカシェンコ政権を支援。28日の首脳会談でもプーチン氏は強制着陸に関し、ベラルーシ擁護の立場を示した。

 ただ、プーチン氏とバイデン米大統領の初会談が6月16日に予定される中、米国との間で一定の協調を模索するロシアとしても、ベラルーシ問題にこれ以上焦点が当たることは望んでいないとみられる。しかし、ルカシェンコ政権は反体制派排除のためになりふり構わなくなっており、その行動は予測がつかない。