【ワシントン時事】米政府が、新型コロナウイルス感染防止策の見直しを余儀なくされている。国内外で猛威を振るうデルタ株について、ワクチン接種済みの人を介して拡散するリスクが従来の想定より高いことが判明。感染者数が再び増加傾向を示す中、マスク着用やワクチン接種を義務付ける動きが官民で広がっている。

マスク・ワクチン「義務化」広がる 新型コロナ対策に反発も―米

 疾病対策センター(CDC)が30日に公表した調査報告によると、東部マサチューセッツ州バーンズタブル郡で最近、開催された大規模な催しに参加し、新型コロナに感染した469人のうち、74%はワクチン接種を終えていた。さらに、詳しい検査を受けた感染者の90%からデルタ株が検出された。

 ワシントン・ポスト紙などが報じたCDCの内部文書によると、ワクチン未接種の人は接種済みの人と比べ、人口当たりの感染者数は8倍、入院患者数や死者数は25倍に上り、ワクチンの効果自体は確認されている。一方で文書は、接種済みでもいったん感染すれば「他人に感染させるリスクは、未接種の人と変わらない可能性がある」とも指摘している。

 米政府は既に、感染リスクが比較的高い地域にある連邦機関に対し「職員や請負業者、来訪者ら全員に、ワクチン接種の有無を問わず庁舎内でのマスク着用」を義務付けるよう指示。バイデン大統領は29日、連邦職員や請負業者ら全員にワクチン接種を受けるか、さもなければ定期的な感染検査に加え、庁舎内でのマスク着用と対人距離の確保を義務付けると発表した。

 CDCのワレンスキー所長は30日のFOXニュースで、連邦レベルでのワクチン接種義務化について「政権は考えていると思う」と発言した。だが、共和党支持者を中心に義務化への反発は根強く、ワレンスキー氏はその後、ツイッターで「民間や連邦機関の一部について言及したもので、全国規模の義務化はない」と釈明した。