菅義偉首相(自民党総裁)が9月中旬に衆院を解散し、同29日投開票の党総裁選を先送りすることもあり得ると周辺に漏らしていることが分かった。複数の政権関係者が31日、明らかにした。二階俊博幹事長の交代を柱とする内閣改造・党役員人事を週明けの6日にも行い、新型コロナウイルスの感染状況を見極めて最終判断する意向。衆院選の日程は10月5日公示、17日投開票を念頭に置いている。ただ、党内には強い反対があり、先行きは不透明だ。

6日にも内閣改造・党人事 首相、体制刷新狙う―衆院選10月17日軸

 首相は先に、衆院選を総裁選の後にする意向を党に伝えていた。その後、岸田文雄前政調会長が出馬を表明し、苦戦を予想する声も出てきたことから、戦略の転換を模索しているとみられる。9月13~16日に臨時国会を召集して解散する案が出ている。関係者によると、首相は総裁選を先送りせず、戦後2回目の任期満了選挙を同じ日程で行う可能性も排除していない。

 首相はコロナ対策を最優先にすると表明しており、感染状況が収束しない中で解散すれば、厳しい批判を招くことが予想される。このため、党内では首相が解散に動いた場合、「閣僚を動員して解散の閣議決定に反対することも辞さない」(閣僚経験者)との声も出ている。

 総裁選を目前に控えた首相が、幹事長を含む党役員人事に踏み切るのは極めて異例。総裁選で争う岸田氏が事実上公約した二階氏交代の争点化を避ける狙いがある。最低水準に落ち込む内閣支持率を踏まえ、態勢を立て直す狙いもある。ただ、支持低迷の原因は首相自身にあるとして、政権浮揚効果は限定的との見方も党内にある。

 首相は既に二階氏から交代への了解を得ており、人事は9月5日の東京パラリンピック閉幕の直後を想定している。新幹事長として体制の刷新を印象付けられる人材の起用を検討。知名度の高い石破茂元幹事長や河野太郎規制改革担当相、実務能力に定評のある萩生田光一文部科学相らの名が取り沙汰されている。

 顔触れ次第では閣僚の入れ替えが必要になるため、内閣改造を同時に行う方向で検討している。党幹部は「幅広い人事になるだろう。党人事をやれば内閣改造と連動する」との見通しを示した。