日本と米国、オーストラリア、インドの4か国の枠組み「Quad」(クアッド)は24日、首相官邸で首脳会談を開いた。ロシアによるウクライナ侵攻を受け、インド太平洋地域でも中国を念頭に、力による一方的な現状変更を許さないことで一致した。中国は同地域で覇権主義的な動きを強めており、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けて連携を確認した。

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 会談は岸田首相、バイデン米大統領、23日に就任した豪州のアンソニー・アルバニージー首相、インドのナレンドラ・モディ首相が出席し、約3時間行われた。

 議長を務めた岸田首相は会談後の記者会見で、「4か国の首脳が一致してメッセージを世界に発信できたことは大きな意義がある」と強調した。

 4首脳はロシアの侵攻が続くウクライナ情勢に懸念を表明し、法の支配や主権、領土一体性の尊重という諸原則は、いかなる地域でも守られることを確認。岸田首相は会談で「インド太平洋地域で同じようなことを起こしてはならない」と述べた。

 会談後に発表した共同声明では「紛争の平和的解決、国際的なルールに基づく秩序を支持する」とした。ロシアと関係が深いインドに配慮し、ロシアの名指しは避けた。

 声明では、東・南シナ海で進出を強める中国を念頭に、「威圧的、挑発的、一方的な行動に強く反対する」と明記した。核・ミサイル開発を進める北朝鮮については、完全な非核化に向けた連携を再確認した。

 インド太平洋地域に対し、今後5年間で500億ドル(約6兆3830億円)以上のインフラ(社会資本)支援を目指すほか、対外債務に苦しむ諸国への支援強化を盛り込んだ。高速・大容量通信規格「5G」を巡る官民対話の取り組みを推進する。いずれも中国への対抗を意識したものだ。

 気候変動対策としてクリーンエネルギーの協力を拡大する。宇宙分野では4か国の衛星情報を地域諸国に提供する枠組みを発足させる。

 会談では、アルバニージー氏が「政権は交代したが、クアッドへの関与は変わっていないし、今後も変わらない」と述べ、モディ氏は「クアッドの枠組みは効果的になっている」と評価した。バイデン氏は「民主主義の親密なパートナーとして、共通の価値観とビジョンのために立ち上がるつもりだ」と語った。

 首脳会談は4回目で、対面では昨年9月の米国開催以来、2回目となる。次回の対面での首脳会談は来年、豪州で開くことで合意した。

共同声明のポイント

▽ウクライナでの紛争が激しさを増す中、国際的なルールに基づく秩序を支持

▽現状を変更し、緊張を高めるあらゆる威圧的、挑発的、一方的な行動に強く反対

▽北朝鮮の弾道ミサイル開発や発射を非難

▽インド太平洋地域に今後5年間で500億ドル以上のインフラ支援・投資

▽不審船探知などの海洋状況把握(MDA)で協力

▽対面の次回首脳会談を2023年に豪州主催で開催