つい最近、「Agentic AI」(エージェンティックAI)という言葉を知った。AIの進化は「爆速」と形容されるが、この言葉自体、週刊誌的な大げさな表現だと思っていた。しかし調べていくうちに、ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長が、昨年の夏に開催された自社のテクノロジーイベント「SoftBank World 2025」ですでに言及していた事実がわかった。
当時は「Agentic AI」ではなく「AIエージェント」という表現だったが、意味するところは同じだろう。同氏は当時、「年内に10億のAIエージェントを作る」と豪語していた。1年近く経ってようやくその意図を理解したが、この計画こそが、サム・アルトマン氏と連携する総額75兆円規模の「スターダスト計画」の骨格を成しているのだろう。というわけで、今日のテーマは「Agentic AIとは何か」である。AIの進化について知るにはAIに聞くのが一番だ。さっそくGeminiに「Agentic AIについて教えて」と問いかけてみた。
即座に返ってきた回答はこうだ。「自ら目標を立て、判断し、ツールを使って実行する自律的なAIのことです。これまでのAIとの決定的な違いは、指示されたことに答えるだけでなく、目標達成のために必要な手順を自分で考え、能動的に行動する点にあります」。
AI分野には「AGI(Artificial General Intelligence:汎用人工知能)」という言葉もある。人間のように幅広い分野の課題を理解し、自ら学習して柔軟に解決できるAIを指す。高市総理が掲げる経済安全保障や成長戦略では、重点投資対象が「AI・半導体」など17分野に特定されており、AI投資の筆頭は「バーティカルAI」(領域特化型AI)である。AGIについては米国や中国が先行しており、日本がいまから追随するのは得策ではないという判断かもしれない。それは理解できるが、ソフトバンクはOpenAIと組み、すでにAgentic AIの開発に着手している。では、Agentic AIとAGIはどこが違うのか。
その議論は一旦置いておき、Geminiの解説を続けよう。「『Agentic』とは『Agency(代理権・主体性)を持っている』という意味です。単なる道具ではなく、あなたの代わりにメールを送り、スケジュールを調整し、必要な情報を収集・整理する『優秀なアシスタント』のように振る舞うため、そう呼ばれています」。なるほど、私の代わりにさまざまな問題をAgentic AIが解決してくれるというわけだ。
デジタル時代において、サポートセンターに繋がらない問題は悩みの種だ。例えばプロバイダーのサポート窓口に電話すると、「ただいま大変混み合っています。このままお待ちいただくか、しばらく経ってからおかけ直しください」というアナウンスが流れる。切ってかけ直しても状況は変わらない。いい加減にしてほしいと叫びたくなる経験をお持ちの方も多いだろう。
当該サイトにはネットでの質問やチャット機能もあるが、要領を得ないことが多く、役に立たない。Q&Aも同様だ。要するに、電話が繋がるまでユーザーは忍耐を強いられる。運よく繋がっても知識の乏しい担当者に当たれば、たらい回しにされる。ユーザーにとってこれ以上のストレスはない。
こうした事態を「Agentic AI」や「AIエージェント」が引き受け、自律的に問題を解決してくれるのであれば、非常にありがたい。そんな時代が目の前に迫っているのかもしれないと考えると、爆速で進化するAIに期待したくなる。しかし、半面で不安もある。もしAIエージェントが「その問題は私の能力を超えています。自分で解決してください」と言い放つような事態になったらどうだろうか。
AIには期待したい。しかし正直なところ、AI関係者はいつもその未来を過大に評価し、効果を大げさに喧伝する傾向がある。これこそがAIブームの「落とし穴」かもしれない。