[ワシントン 8日 ロイター] – バイデン米大統領は8日、人工妊娠中絶の権利を擁護するための大統領令に署名した。連邦最高裁が6月、中絶を憲法上の権利と認める1973年の「ロー対ウェイド判決」を覆す判断を下したことを受け、国内の半分以上の州が中絶の禁止に動くとみられており、与党民主党内からバイデン大統領に行動を取るよう求める声が強まっていた。

しかし、州政府は中絶や中絶薬へのアクセスを制限する法律を制定する権限を持つため、大統領令の影響は限定的とみられている。

バイデン大統領は中絶を憲法上の権利と認めないという最高裁の判断について「むき出しの政治権力の行使」とし、「共和党の過激派と連携している制御不能な最高裁が、自由と個人の自律性を奪うことを許してはならない」と非難した。

バイデン大統領は、中絶に絡む緊急医療へのアクセスを確実にし、中絶薬や避妊薬、避妊用具の入手を容易にするよう厚生省に指示。さらに大統領令の下、中絶を受ける患者のプライバシー保護や中絶クリニックなどの安全強化を目指すほか、政権の対応を調整するタスクフォースを設立する。

バイデン大統領はこれまでに、米50全州で中絶の権利を法制化するよう議会に求め、中絶の権利を守るために議会上院のフィリバスター(議事妨害)規則を例外的に変更する案を示している。