岸田首相は27日、前日に続き、安倍晋三・元首相の国葬に伴う「弔問外交」を精力的に展開した。インドのモディ首相、オーストラリアのアルバニージー首相と首脳会談をこなし、26日に会談した米国のハリス副大統領と合わせて、安倍氏が提唱した日米豪印の枠組み「クアッド」の強固な結束を内外に印象づけた。

 岸田首相は東京・元赤坂の迎賓館での日印首脳会談で、安倍氏とモディ氏が「日印関係の新たな地平を切り開いた」と伝えた。その上で「外交的な業績をさらに発展させ、『自由で開かれたインド太平洋』の実現に向け、緊密に連携していきたい」と強調。モディ氏は「安倍氏は初めて『インド太平洋』を語り、クアッドを作った」と応じた。

 同席者によると、モディ氏は安倍氏の思い出を語る際、感極まって泣きそうになる場面もあった。

 日豪首脳会談では、アルバニージー氏が「クアッドは安倍元首相のリーダーシップなくして開始できなかった」と述べ、功績をたたえた。岸田首相は、アルバニージー氏とともに国葬参列のため来日した豪州の元首相3人とも懇談した。

安倍氏は、台頭する中国への対抗を念頭に、インドとの関係強化を進め、民主主義や法の支配など共通の価値観を持つ日米豪印の連携強化を主導した。5月に東京で開いたクアッド首脳会談は、「自由で開かれたインド太平洋」を推進する中心的な枠組みに育った。

 首相は27日、欧州連合(EU)のミシェル欧州理事会常任議長(EU大統領)とも会談し、結束して対露制裁を継続する方針を確認した。28日には、英国のメイ元首相や韓国の ハンドク 首相らと会談する予定。26~28日の3日間で太平洋諸国などを含む30か国以上の首脳らと意見を交わすことになる。外務省幹部は「こういう機会でないと会えない首脳もいる」と意義を解説する。